「禁忌-taboo-」浜田文人氏

公開日: 更新日:

 さらに、これまで著者が築き上げてきた作品のテイストをすべてリセットして描いたという点も、作家としてタブーへの挑戦だったという。文体をこれまでとは全く変え、“描写し過ぎない”ことを心がけながら筆を進めたそうだ。

「近頃の小説界に対して強い危機感があったためです。描写し過ぎ、説明し過ぎで、ある意味分かりやすい作品が増えた。しかし一方で、行間を読んだり余韻を感じさせるという、小説の持つ魅力が消滅しつつあると思う。だから、まずは自分の作品から小説本来の姿に立ち返ろうと考えました」

 著者の人気シリーズである「公安捜査」や「捌き屋」とは雰囲気が大きく異なる本作。しかし、研ぎ澄まされた筆致の中には、現代社会が抱える闇や登場人物たちの怒りと悲しみが鮮明に浮かび上がってくる。

 著者渾身の正統派ハードボイルド作品だ。(幻冬舎 1600円+税)

▽はまだ・ふみひと 1949年、高知県生まれ。関西大学法学部卒業。フリーの記者として新聞、週刊誌等に寄稿。 2000年に「公安捜査」で作家デビュー。同シリーズの他、「捌き屋」シリーズ、「若頭補佐 白岩光義」シリーズなど著書多数。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  2. 2

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    風そよぐ三浦半島 海辺散歩で「釣る」「食べる」「買う」

  5. 5

    広島・大瀬良は仰天「教えていいって言ってない!」…巨人・戸郷との“球種交換”まさかの顛末

  1. 6

    広島新井監督を悩ます小園海斗のジレンマ…打撃がいいから外せない。でも守るところがない

  2. 7

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 8

    令和ロマンくるまは契約解除、ダウンタウンは配信開始…吉本興業の“二枚舌”に批判殺到

  4. 9

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意

  5. 10

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か