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経済学が解き明かす現代ニッポンの真実編

 さまざまな出来事を経済学の視点から眺めてみると、言葉のマジックでわかった気になっていたことが、数字に置き換えられた途端、ごまかしが利かなくなって真実の姿を見せ始める。今回はそんな発見をもたらしてくれる、面白経済学な4冊をご紹介!

 母親にベッタリくっついて乳離れできない男性は「マザコン」「冬彦さん」と呼ばれ、長年侮蔑の対象だった。ところが近年、この母子関係に異変が起きている。母親と仲良しであることを隠さず、屈託なく周囲にアピールする「ママっ子男子」と呼ばれる20歳前後の男性が増えているのだ。

 友人と同様LINEで連絡を取り合い、洋服の購入から恋愛まで何でも相談し、時には一緒に旅行すらする。「母親にべったりなんて気持ち悪い」というのはもはや旧世代の感覚で、いまや「仲良しのどこが悪いの?」というスタンスらしい。こんな新現象にスポットを当てて、分析しているのが「ママっ子男子とバブルママ」(原田曜平著 PHP研究所 800円+税)だ。

 この現象は、バブル経済を経験して万能感を持つ「バブルママ」と、厳しい経済状況を把握した上で合理的に行動する「さとり世代」の男子のコンビに見られるもので、昭和の時代の母と息子の関係とは大きく異なる。

 ソーシャルメディアでのちょっとした発言が仲間内で筒抜けになりやすい昨今、デリケートな話題ほど、外に漏れる心配のない母親とすることになるというのだ。

 著者はこの親子関係こそ、低迷が続く日本経済において、新しい消費の起爆剤になるのではないかと説く。

 さとり世代はモノを買わないといわれているが、SNSで活用できそうなイベントへの消費や、男性向け化粧品などの美容への関心も強い一面を持ち、決して消費しないわけではない。だからこそ、従来の商品に母と息子のセット消費という発想を取り入れ、顧客ごとの消費額を増やすというマーケティング戦略が可能なのではないかという。たとえば、同じ美容院に母親と息子が通うと母親に美容品の特典がつく、母と息子が互いの服を選び合えるアパレルショップ、食事内容や運動量・ダイエットなど互いに健康管理し合える共有サービスなどなど、母+息子の財布を緩ませるアイデアは尽きない。かつての冬彦さんが、日本経済の救世主になる日も近い!?

「『学力』の経済学」中室牧子著

 世の中には教育にまつわる諸説があふれている。特に東大合格者の母親の手記や、有名な教育専門家の主張には、多くの人が飛びついてしまうが、それはどこまで信頼できるのか。「教育経済学」の視点から、そうした数々の諸説を検証する必要性を訴えているのがこの本だ。

 例えば、子ども全員を東大に合格させた母親の例を挙げれば、そのこと自体が例外中の例外で、万人に当てはめるには無理がある。ひとりの成功体験に飛びつく前に、集積された大規模なデータを分析し、そこに規則性を見いだすことで、どんな教育に効果があるのかが見えてくるのではないかと著者は指摘する。

 読書や計算など学習をしたことで報酬が得られる「インプット褒美型」とテストで良い点を取るなど結果に焦点をあてた「アウトプット褒美型」とでは、何を行動すればよいかが明確な「インプット型」の方が良い成績が得られるなど、具体例も提示。少人数学級の効果の検証なども興味深い。(ディスカヴァ―・トゥエンティワン 1600円+税)

「プロ野球の経済学」橘木俊詔著

 ヒーローのように扱われるプロ野球選手も、ひとりの労働者として労働経済学の視点から眺めてみると別の顔が見えてくる。野球選手は一見球団に雇われている被雇用者に見えるが、その実態は球団と年ごとに契約して働く自営業者であり、普通の勤め人とは採用・解雇・移籍・年俸などの決まり方も全く異なる。

 たとえば、清原と桑田というふたりのスーパースターを比較してみると、清原の生涯年俸は51億2300万円、桑田が29億3320万円と、無冠の帝王の清原がタイトルを取っている桑田を1・75倍も上回っていた。これは、タイトルよりも投手なら勝敗数、打者なら打率・打点・ホームラン数を評価する傾向にあること、打者の方が投手より注目を浴び年俸が高かったこと、記憶に残る活躍が評価されがちなことなどに起因する。

 本書はプロ野球が日本で職業として認められてきた経緯や、会社とは違う球団というギルド体質を持つ組織の歴史もひもとく。野球というスポーツの、ビジネスとしての側面を知ることができる。(東洋経済新報社 1500円+税)

「天皇家の経済学」吉田祐二著

 皇室の費用は、皇族の公的活動に要する経費である宮廷費と、天皇・皇后・皇太子一家の生活費である内廷費と、天皇家以外の各宮家に支出される皇族費の3種類がある。平成27年度において、宮廷費は55億6294万円で内廷費は3億2400万円だった。こうした天皇家にまつわるお金は、どのような経緯を経て決められ、どのように動いているのか。本書は、その歴史的背景を掘り起こし、多くの人が知らない天皇家の役割や、天皇家と政治家や企業の関係性に迫る意欲作だ。

 明治維新後に元老によって皇室の財産が形成され、まるで天皇株式会社の様相を呈した戦前の日本の実態、天皇財閥を中心にして三井・三菱などの財閥に対して生産力を増強する口実に過ぎなかった国家総動員体制、敗戦によって天皇財閥の代表取締役の役割から降りた昭和天皇など、天皇家の経済を追っていくと曖昧にされてきた日本の近代史が見えてくる。(洋泉社 1600円+税)

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