堅物が支えた映画ビジネス ハリウッドがひれ伏した銀行マン

公開日: 更新日:

 冒頭、老紳士の顔が映る。謹直な顔立ちに柔和な笑み。表情がいい。近ごろとんと見かけない、自分の人生に十分満足している男の顔。――こうして始まるのが今週末封切りの「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」だ。

 題名を見るといやみな金貸しの話みたいだが、実は「ターミネーター」「プラトーン」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」など80~90年代の話題作に次々出資し、映画製作に革新を起こした人物の伝記。彼フランズ・アフマンはオランダの堅物銀行家だが、あるときイタリアの映画製作者ディノ・デ・ラウレンティスと知り合い、独立プロに資金を提供する新手法を編み出す。

 脚本と企画だけで世界中の配給会社と交渉し、その信用をもとに銀行が作品に資金を貸し付ける。これが「プリセールス」(事前販売)で、大手スタジオがブロックバスター(大当たり)ねらいに明け暮れた時期に、A級とB級の間をいく映画屋たちが大暴れできるような基盤をつくったのだ。

 面白いことにこのドキュメンタリーの監督はアフマンの娘ローゼマイン。真面目一方の銀行員がいかにして映画ビジネスの一時代を支えたか、その革新的なしくみと成功の秘訣を巧みなインタビュー構成で明らかにしながら、最終部にいたってふいに父娘の濃密な情愛があふれ出す。この驚きの転調もちょっとした見もの。

 そういえば文学の世界には「父を恋うる娘たち」の系譜があるという。「増補 幸田文対話 上」(岩波現代文庫 1100円+税)は父・幸田露伴を回想する娘への聞き書き。文章と同様、端正な語りがすばらしい。〈生井英考〉

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「左膝の半月板が割れ…」横綱・豊昇龍にまさかのアクシデントで稽古中止

  2. 2

    西武にとってエース今井達也の放出は「厄介払い」の側面も…損得勘定的にも今オフが“売り時”だった

  3. 3

    「ラブホ密会」問題も何のその!小川晶前市長の超“人たらし”戦略 12日投開票の前橋市長選情勢

  4. 4

    アストロズ今井達也の西武への譲渡金ついに判明! NPB広報室から驚きの回答が

  5. 5

    菊池風磨のカウコン演出に不満噴出 SNS解禁でSTARTO社の課題はタレントのメンタルケアに

  1. 6

    「豊臣兄弟!」白石聖が大好評! 2026年の毎週日曜日は永野芽郁にとって“憂鬱の日”に

  2. 7

    西武・今井達也「今オフは何が何でもメジャーへ」…シーズン中からダダ洩れていた本音

  3. 8

    ロッテ前監督・吉井理人氏が大谷翔平を語る「アレを直せば、もっと良く、170kmくらい投げられる」

  4. 9

    松山千春がNHK紅白を「エコひいき」とバッサリ!歌手の“持ち時間”に求めた「平等」の正当性を考える

  5. 10

    オリックスへのトレードは中日が年俸の半分を肩代わりしてくれて実現した