「江戸遊里の記憶」渡辺憲司著
江戸に遊郭が誕生したのは元和3(1617)年。江戸幕府が渋りに渋ってようやく設置を認めたその場所は葦屋町の東隣(現・中央区日本橋堀留町2丁目)だった。しかし、明暦の大火を機に吉原へ移転する。
吉原遊女の魅力は、何といっても意気地の強さだったという。西鶴は「好色一代男」で、「吉原の高尾に35歳までふられ、その後も首尾せず」と悔しさをのべ、高尾の張りの強さを強調している。また若かりし頃の高橋是清は「花魁の部屋にウエブスターの大辞典や、ガノーの究理書があって驚いた」と記し、高村光太郎は「元禄髷に結っていた。(中略)いわば一目ぼれというやつでしょう」。吉原神社近くに住むとび職の親方は、「吉原の子はみんな働き者で親孝行だった」とその思い出を語る。
全国各地の遊里を訪ね歩き、人々への聞き取りや文献から廓文化を掘り起こした研究エッセー。(ゆまに書房 2200円+税)