「江戸遊里の記憶」渡辺憲司著

公開日: 更新日:

 江戸に遊郭が誕生したのは元和3(1617)年。江戸幕府が渋りに渋ってようやく設置を認めたその場所は葦屋町の東隣(現・中央区日本橋堀留町2丁目)だった。しかし、明暦の大火を機に吉原へ移転する。

 吉原遊女の魅力は、何といっても意気地の強さだったという。西鶴は「好色一代男」で、「吉原の高尾に35歳までふられ、その後も首尾せず」と悔しさをのべ、高尾の張りの強さを強調している。また若かりし頃の高橋是清は「花魁の部屋にウエブスターの大辞典や、ガノーの究理書があって驚いた」と記し、高村光太郎は「元禄髷に結っていた。(中略)いわば一目ぼれというやつでしょう」。吉原神社近くに住むとび職の親方は、「吉原の子はみんな働き者で親孝行だった」とその思い出を語る。

 全国各地の遊里を訪ね歩き、人々への聞き取りや文献から廓文化を掘り起こした研究エッセー。(ゆまに書房 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

    西武フロントの致命的欠陥…功労者の引き留めベタ、補強すら空振り連発の悲惨

  2. 2
    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

    西武の単独最下位は誰のせい? 若手野手の惨状に「松井監督は二軍で誰を育てた?」の痛烈批判

  3. 3
    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

    巨人・小林誠司の先制決勝適時打を生んだ「死に物狂い」なLINE自撮り動画

  4. 4
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 5
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  1. 6
    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

    日本ハムは過去2年より期待できそう 新外国人レイエスが見せつけた恐るべきパワー

  2. 7
    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

    大谷はアスリートだった両親の元、「ずいぶんしっかりした顔つき」で産まれてきた

  3. 8
    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

    【中日編】立浪監督が「秘密兵器」に挙げた意外な名前

  4. 9
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  5. 10
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗