人類が積み上げてきた思索の地層に触れる
「続・哲学用語図鑑」田中正人著
難解そうで敬遠しがちな哲学を身近なものにしてくれる大人のための図鑑。ピタゴラスからサンデルまで主要70人を紹介した前著(2015年刊)に続き、続編の本書では諸子百家と呼ばれる学者たちの思想を中心にした「中国哲学」や、明治以降の「日本哲学」などを取り上げる。
そもそも諸子百家とは何か。紀元前6世紀、それまで国を治めていた周王朝が崩壊し、各地域の諸侯が対立する動乱の時代が始まる。春秋戦国時代と呼ばれるこの時代、各諸侯は生き残るために有能なコンサルタントやブレーンを必要とし、さまざまな思想家が輩出された。彼らを称して諸子百家というそうだ。
諸子百家の中でも後世まで大きな影響を及ぼした学派が儒家と道家で、儒家の祖があの孔子だ。
孔子の思想の根幹は、人を愛する心=「仁」と仁が目に見える形となって現れたもの=「礼」(具体的には礼儀作法)に集約されるという。
こうしたキーパーソンとその思想を、イラスト入りで簡潔に紹介。するすると頭に入ってくるから不思議だ。
日本編では、「哲学」という訳語を作った西周をはじめ、「絶対矛盾的自己同一」を説いた西田幾太郎ら京都学派の哲学者らを取り上げ解説。
一方、20世紀以降の現代は、フランスやドイツの「大陸哲学」と英米の「分析哲学」に大別される。本書の後半は、その英米の哲学者と、前著で網羅できなかった8人の大陸哲学者を紹介。
エロチシズムの本質は、性行為におけるさまざまな禁止=タブーの侵犯にこそあると唱えたフランスの思想家バタイユら、身近な話題に興味をそそられながら読んでいると、ついつい他のページにも目が移り、知的好奇心が刺激される。人類が積み上げてきた思索の地層の一端に触れられる好著。
(プレジデント社 1800円+税)