アデリーペンギンが群れて行動する本当のワケ

公開日: 更新日:

「せつない動物図鑑」ブルック・バーカー著、服部京子訳

 動物を見て可愛いとか、カッコイイと思ったことはあっても、「せつない」と感じたことはない。

 多くの人も同じだと思うのだが、本書を読むとそれは動物のことが本当はよく分かっていなかっただけだと気づかされる。

 例えば、仲良く群れで行動するアデリーペンギンだが、海に飛び込むときは非情な一面を見せる。おしくらまんじゅうをして1匹を崖から突き落とし、仲間が敵に襲われないかその目で無事を確認してから、一斉に海に飛び込むのだそうだ。

 動物の外見だけで判断していては分からない、そんな動物たちの「せつない」生態を紹介しながら、その素顔に迫るイラスト図鑑。

 夫婦になると一生を同じ相手と過ごすことで知られるメンフクロウだが、実は離婚率が25%にも及ぶそうだ。

 また、横長の四角形の瞳孔を持つヤギは、正面から真後ろまで360度近い範囲を見ることが可能で、常に自分のお尻の穴が視界のどこかに見えているのだとか。

 そんな「すごいけど、せつない」動物たちから、発情すると口と口でキスをするが、その目的はオスがメスの口にゲロを流し込むことだというコボウシインコなど「恋は、せつない」動物、クジラは歌で仲間と会話をするが、声が高かったため仲間が耳を貸してくれず、海の中で迷子になってしまったクジラなどの「さみしくて、せつない」動物、そして生後わずか2週間で流氷の上に置き去りにされ、6週間、餓死やホッキョクグマの恐怖に耐えなくてはならないタテゴトアザラシの赤ちゃんのように「おとなになるのは、せつない」動物たちまで。112の生き物たちのせつない真実を紹介。

 一読したら動物たちを見る目が変わり、よりいとおしい存在に思えてくるはず。

 (ダイヤモンド社 1000円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の三振激減がドジャース打者陣の意識も変える…史上初ワールドシリーズ連覇の好材料に

  2. 2

    国民民主党から問題議員が続出する根源…かつての維新をしのぐ“不祥事のデパート”に

  3. 3

    党勢拡大の参政党「スタッフ募集」に高い壁…供給源のはずの自民落選議員秘書も「やりたくない」と避けるワケ

  4. 4

    「ロケ中、お尻ナデナデは当たり前」…「アメトーーク!」の過去回で明かされたセクハラの現場

  5. 5

    注目の投手3人…健大高崎158km石垣、山梨学院194cm菰田陽生、沖縄尚学・末吉良丞の“ガチ評価”は?

  1. 6

    夏の甲子園V候補はなぜ早々と散ったのか...1年通じた過密日程 識者は「春季大会廃止」に言及

  2. 7

    コカ・コーラ自販機事業に立ちはだかる前途多難…巨額減損処理で赤字転落

  3. 8

    巨人・坂本勇人に迫る「引退」の足音…“外様”の田中将大は起死回生、来季へ延命か

  4. 9

    高市早苗氏の“戦意”を打ち砕く…多くの国民からの「石破辞めるな」と自民党内にそびえる「3つの壁」

  5. 10

    「U18代表に選ぶべきか、否か」…甲子園大会の裏で最後までモメた“あの投手”の処遇