日本の「顧客対応」は世界1位だが「自然資源の認知度」は60位!

公開日: 更新日:

 少子高齢化と人口減少社会を迎える日本では、インバウンド市場の拡大こそが経済成長に必要不可欠な要素となっている。2007年からスタートした観光立国推進基本計画から10年が経ち、日本を訪れる外国人は16年には2404万人に達している。

 しかし、16年の外国人観光客数が8260万人のフランスや7556万人のスペインなどと比較すると、日本の観光産業の成長余地はまだまだあるといえる。田川博己著「観光先進国をめざして」(中央経済社 1600円)では、日本のインバウンド市場の現在とともに、今後、日本の観光産業が何をなすべきかを解説している。

 17年4月、世界経済フォーラムにおいて観光競争力ランキングが発表された。日本は前回の15年9位から4位にランキングを上げ、項目別では「顧客への対応」や「鉄道インフラ」が世界1位に輝いている。一方、「自然資源の認知度」では、60位という低評価である。季節ごとに美しい表情を見せる日本の自然だが、日本人にとっては当たり前すぎて、十分なPRにつながっていないのではないか。

 また、「国のブランド戦略」という項目は、前回の2位から42位に下がっている。これは、歴史や買い物、食や地域など観光に関わる45のカテゴリーについて、世界中の旅行者がネット検索したキーワードを分析して得点化したもの。順位の低さは、国や自治体のサイトやSNSで、十分な情報提供がされていない、あるいは旅行者にとって不必要な情報が多い可能性を示唆しているという。

 今、世界の旅行者の興味は、近代化された観光地から、生活文化の中で培われてきたモノ・コトへとシフトしている。歴史の裏付けのないものではなく、祭りや古い町並み、施設、地域で守り続けてきた自然などだ。歴史遺産は、見せ方にもひと工夫が必要だ。京都の二条城の案内板には建築の仕様が事細かに書いてあるが、外国人が知りたいのは、なぜそこで大政奉還というドラマチックな出来事が行われたのかということ。それこそが歴史文化であり、その他の地域の文化財も見せ方を見直すべきだと本書。

 まずは2020年の東京五輪を見据え、観光資源を最大限に生かす変革が急務だ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手

  2. 2

    早瀬ノエルに鎮西寿々歌が相次ぎダウン…FRUITS ZIPPERも迎えてしまった超多忙アイドルの“通過儀礼”

  3. 3

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  4. 4

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  5. 5

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  1. 6

    大炎上中の維新「国保逃れ」を猪瀬直樹議員まさかの“絶賛” 政界関係者が激怒!

  2. 7

    池松壮亮&河合優実「業界一多忙カップル」ついにゴールインへ…交際発覚から2年半で“唯一の不安”も払拭か

  3. 8

    維新の「終わりの始まり」…自民批判できず党勢拡大も困難で薄れる存在意義 吉村&藤田の二頭政治いつまで?

  4. 9

    日本相撲協会・八角理事長に聞く 貴景勝はなぜ横綱になれない? 貴乃花の元弟子だから?

  5. 10

    SKY-HI「未成年アイドルを深夜に呼び出し」報道の波紋 “芸能界を健全に”の崇高理念が完全ブーメラン