「撮りたくなるハワイ」近藤純夫著

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 元祖楽園として、多くの観光客を魅了してきたハワイ諸島だが、ニュース映像でご存じのハワイ島キラウエア火山の噴火のように、原初の自然の荒々しさを感じられる土地でもある。

 本書は、観光地としての姿とはまた異なる、そんなハワイ諸島全6島の知られざる魅力に迫るフォトエッセー集。

「ギャザリング・プレイス」(世界中から人々が集まるところ)と呼ばれるオアフ島。この島を訪れる人の誰もが一度は立ち寄るワイキキという地名は、「湧き出る水」のことで、かつて一帯は大湿地帯だったという。ここを拠点とした王・カークヒヘヴァは、ある日、飛来したカアウヘレモアという神秘の鳥が激しく大地を削り取るのを目の当たりにする。その場所に1万本以上のココヤシを植え「ヘルモア(鳥の傷痕)」と名付け、カハハナというヘイアウ(神殿)を建てた。この聖地が現在のロイヤル・ハワイアンホテルの敷地で、ココヤシの林が今もその歴史を伝えている。

 一方、観光客がめったに訪れることがないのが、島の中心・ピコ(へそ)にあるクーカニコロという場所だ。遠くに山々を望む平原の真ん中に置かれた巨石は、かつて出産に用いられたという。ここは神とつながる重要な場所で、この石の上で出産すると赤ん坊にマナと呼ばれる霊的な力が与えられるといわれていた。この地を奪い合うカークヒヘヴァら権力者の戦が幾度ともなく行われてきた。そんな歴史をのみ込んで、今は静寂だけが辺りを支配する。

 著者は、ハワイの島々の大自然の中に身を置くと、心の中のあれこれがリセットされる、ハワイはそんな空気に満ちていると語る。「その空気を写すことがすべて」だという著者の写真からは、パワースポットならではの清涼な「気」までもが伝わってくる。

 カウアイ島のケエ・ビーチの人を寄せ付けない深い森もかつては神の領域だった。海を望む高所には、フラの女神としてあがめられるラカのハーラウ(フラの修行所)の跡や、女神を祭った「カ・ウル・オ・ラカ・ヘイアウ」があり、フラの聖地になっている。

 島の北西部に広がる断崖はナパリ(連なる崖)と呼ばれ、屏風状の岩が30キロほど続く。風雨による浸食がさまざまな景観をつくり出しているが、中でも「ブライト・アイ」と呼ばれる巨大なスカイホールは、カヌーイストしか近づけない秘境中の秘境だ。

 ブライト・アイは、そりたつ崖に外海から水流が流れ込み作り上げた巨大な円柱状のたて穴で、甌穴の一種だという。

 その他、マウイ島のハワイ王国時代から続く養魚池で今は鳥たちのサンクチュアリとなっている「カナハ・ポンド」や、絶壁に代々の王の墓が隠されているという「イアオ渓谷」、日本人移民が支えたハワイ島コナのコーヒー農園の近くにある日本食堂「マナゴ・レストラン」、幾度ともなく津波に襲われたモロカイ島の「ハーラヴァ湾」、「神々の庭園」といわれるラナイ島の赤土と巨石の荒野など。

 その土地の歴史や伝説をひもときながら紹介される大自然が生んだ神々しいまでの風景に、ハワイのイメージが一新される。

 (亜紀書房 1600円+税)

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