霊たちに体を貸してつくる料理は極上の味わい

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「神様の定食屋」中村颯希著/双葉社 611円+税

「おもてなし」という言葉の語源には、「モノを持って成し遂げる」というのと「表裏がない」、つまり、裏表なく相手を迎えるという2つの意味があるという。誰かのために料理をつくるというのはまさにおもてなしで、心を込めた料理は、自分の思いを伝えることができる。本書にはそんな思いが込められた5つの料理が登場する。

【あらすじ】システムエンジニアの高坂哲史の両親は「てしをや」という定食屋を営んでいたが、交通事故で急死してしまう。すると、高校時代から店を手伝っていた妹の志穂が「店を継ぐ」と宣言。

 志穂を助けるべく会社を休職した哲史だが、キャベツの千切りも満足にできず志穂から罵られる毎日。業を煮やした哲史は近所の神社に行って「いきなり料理が得意になったりしねえかなあ……」と愚痴ると、「あい承知した」という神様の声。そこへ恰幅のいいおばちゃんが現れて哲史の体の中に入ってきた。

 店に戻ると、自分の中にいる時江と名乗るおばちゃんが手際よくチキン南蛮をつくっていく。出来上がるのと同時に彼女の息子の敦志が現れる。気弱な敦志の就職が決まらず、それが気がかりで時江は成仏できないでいたのだ。初めて入った定食屋で亡き母とそっくりの味のチキン南蛮を食べた敦志は、母への感謝を口にする……。

【読みどころ】以後、哲史は困ったことが起きるたび神社へ行き、この世に思いを残した霊たちに体を貸しては窮地を脱していく。弟子に病気のことを伝えられないまま逝ってしまった和食料理人の天たまかけご飯、年若い嫁に感謝を言えなかった姑の具だくさん豚汁、愛する妻に記念品を渡し損ねたフランス人のフレンチ風オムライス――。残された人への思いが極上の味を奏でる。 <石>

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