「愉楽にて」林真理子著

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 家柄、財産、知性と教養を併せ持つ50代の男が、東京、シンガポール、京都を舞台に、官能的な夢物語を繰り広げる。日本経済新聞連載中から話題を呼んだ長編小説。

 久坂隆之は老舗医薬品メーカーの副会長。書物と美術品を愛し、多国語に堪能な学究肌だが、無為に生きることに憧れ、資産に飽かせて優雅な日々を送っている。妻と娘がいるが、東京とシンガポールを往来し、幾多の女と情事を重ねている。

 久坂の友人、田口靖彦は理系インテリで、老舗製糖会社の三男坊。真面目なマザコン男だが、なかなかの二枚目。資産家の妻が急逝し、莫大な遺産を手にした彼は、祇園の芸妓の旦那になる。

 そんな2人のモテ男の前に、とびきりの中国人美女、ファリンが現れた。国際的に活躍するキャリアウーマンで、かつての中国共産党幹部の孫娘。これぞ本当の恋の相手か。2人の男は色めきたち、それぞれのやり方でファリン攻略を試みるが……。

 日本社会のピラミッドの頂点に属する熟年男の華麗な生活を通して、大人の遊びにまつわる数々のうんちくが披露される。今どきの最先端グルメ、お茶屋遊び、漢詩、茶道、高級ワイン、オペラ。普通のサラリーマンには夢のまた夢の世界。

 だが、リッチで知的な現代の数寄者も、時代の流れや加齢といった現実には抗えない。彼らの行く手には果たして何が待っているのか。

(日本経済新聞出版社 1800円+税)

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