「東京輪舞」月村了衛著

公開日: 更新日:

 1976年、ロッキード事件が発覚し、前首相逮捕という異例の事態に陥っていたさなか、警視庁公安部にCIAから日本に潜伏中の元ロッキード社社員ヘンリー・ワイズの捜索依頼が舞い込む。公安部外事第1課の砂田修作は、日本に留学中のワイズの娘アンナに接近しワイズの確保を図るが、アンナと思われた娘は、実はKGBのスパイ、クラーラだった。

 クラーラにはめられた砂田だが、この失敗を糧に、以後、東芝のCOCOM違反、ソ連の8月クーデター、オウム真理教事件、国松警察庁長官狙撃事件、金正男密入国事件といった昭和から平成にかけての大事件に関わっていく。そこで砂田が直面するのは、事件の本質から目をそらし、派閥の力学に翻弄され、ソ連崩壊以後の変化に対応できない公安部の衰退ぶりだった。

 上層部からの圧力や仲間の裏切りにもめげず、単身独自の捜査を続けていく砂田と、事あるごとに砂田を陰で操りながらも手を差し伸べていくクラーラ。この2人を軸に、秘められた公安活動の暗部に光を当てるべく大胆な仮説を打ち出していく。

(小学館 1800円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  2. 2

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  3. 3

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  4. 4

    片山さつき財務相の居直り開催を逆手に…高市首相「大臣規範」見直しで“パーティー解禁”の支離滅裂

  5. 5

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  1. 6

    小林薫&玉置浩二による唯一無二のハーモニー

  2. 7

    森田望智は苦節15年の苦労人 “ワキ毛の女王”経てブレーク…アラサーで「朝ドラ女優」抜擢のワケ

  3. 8

    臨時国会きょう閉会…維新「改革のセンターピン」定数削減頓挫、連立の“絶対条件”総崩れで手柄ゼロ

  4. 9

    阪神・佐藤輝明をドジャースが「囲い込み」か…山本由伸や朗希と関係深い広告代理店の影も見え隠れ

  5. 10

    阪神・才木浩人が今オフメジャー行きに球団「NO」で…佐藤輝明の来オフ米挑戦に大きな暗雲