「銀の仮面」ヒュー・ウォルポール著 倉阪鬼一郎編訳
ディナーパーティーの帰り道、ソニアは暗がりから現れた男に声をかけられる。警戒して振り切ろうとするが、空腹で妻子が待つ家に帰る気力がないという男の話につい足を止め、自宅に招き入れてしまう。男は目の覚めるような美男子だったが、貧相な服装から話は真実だと思わせた。
出されたサンドイッチで腹を満たした男は、屋敷中に飾られた美術品に目を輝かせる。芸術への造詣を持ち合わせているらしい。中でもソニアがお気に入りの銀の仮面を褒められ、まんざらでもない。しかし、ソニアは男の帰宅後に大切なヒスイのシガレットケースがなくなっていることに気づく。
江戸川乱歩が激賞したこの表題作をはじめ、13編を収録した英国人作家による短編集。
(東京創元社 1000円+税)