「超ファシリテーション力」平石直之著/アスコム

公開日: 更新日:

「猛獣使い」とも評される、テレビ朝日・平石直之アナウンサーが書いた「いかにして場を円滑に回していくか」の極意を描く本である。同氏は、各界の論客や話題の人々、炎上の渦中にいる人などが登場する報道番組「ABEMA Prime」(ABEMA)の進行を担当し、月曜日から金曜日まで番組を進めていく。

 同番組を見ると分かるのだが、とにかく出演者のクセが強すぎる。そこを同氏の存在によってなんとか回していくさまが名物のひとつだが、一般的なサラリーマンの会議術にも通じるテクニックや考え方が本書では多数登場する。

 同氏の番組の回し方を見ていると「とにかく皆の良い発言を取り出そうとする」「とにかくこの場を円滑に進めたい」「とにかく視聴者を満足させたい」ということが分かるのだが、次の言葉にすべてが集約されているだろう。

〈アベプラには、世間で気難しいと思われている人や、バッシングのさなかにいる人が、ゲストとして出演されることもあります。そうしたとき、私は自らのファシリテーターの信念として、まずはゲストに寄り沿い、言いたいことをきちんと話してもらえるよう、ほかの出演者や視聴者からの厳しい声から守るスタンスを取ることがあります。みようによってはファシリテーターである私がへりくだりすぎているように受け取られることがあることも充分に理解しています〉

 会議において、クセの強い別部署の実力者2人がいて、その取り巻きも参加したとする。そういったときに、平石氏のようなファシリテーターがいないと単なる言い争いになり、会議は決別する。そうしたファシリテートの重要性を本書はこれでもか! とばかりに繰り出す。

「即使える!キラーフレーズ集」もあるが、これがいい。参加者同士で激しい言い合いが始まってしまったときは「いったん、こちらで引き取らせていただきます」と言うのである。「遮る」ではなく「引き取る」という言葉にするのがキモだ。うーん、さすがはファシリテートのプロ!

 さて、この本について私が個人的に悲哀を感じるのが、同氏はテレビ朝日の「局アナ」の立場だったが、看板番組「報道ステーション」のメインキャスターの座を後輩である富川悠太アナに奪われ、現場リポーターになったことだ。後輩が場を仕切っている中、自分は寒さに耐えて外からリポートをする。そんな彼が再び場を仕切る立場になった。その背景も含めて読むべし、である。 ★★半(選者・中川淳一郎)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

    狙われた大谷の金銭感覚…「カネは両親が管理」「溜まっていく一方」だった無頓着ぶり

  2. 2
    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

    米国での評価は急転直下…「ユニコーン」から一夜にして「ピート・ローズ」になった背景

  3. 3
    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

    大谷翔平は“女子アナ妻”にしておけば…イチローや松坂大輔の“理にかなった結婚”

  4. 4
    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

    「ただの通訳」水原一平氏がたった3年で約7億円も借金してまでバクチできたワケ

  5. 5
    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

    水原一平元通訳は稀代の「人たらし」だが…恩知らずで非情な一面も

  1. 6
    新婚ホヤホヤ真美子夫人を直撃、米国生活の根幹揺るがす「水原夫人」の離脱

    新婚ホヤホヤ真美子夫人を直撃、米国生活の根幹揺るがす「水原夫人」の離脱

  2. 7
    違法賭博に関与なら出場停止どころか「永久追放処分」まである

    違法賭博に関与なら出場停止どころか「永久追放処分」まである

  3. 8
    大谷翔平のパブリックイメージを壊した水原一平通訳の罪…小栗旬ら芸能人との交流にも冷たい視線

    大谷翔平のパブリックイメージを壊した水原一平通訳の罪…小栗旬ら芸能人との交流にも冷たい視線

  4. 9
    小室圭さんが窮地の大谷翔平の“救世主”に? 新通訳&弁護士就任にファンが期待

    小室圭さんが窮地の大谷翔平の“救世主”に? 新通訳&弁護士就任にファンが期待

  5. 10
    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終