「グリーン・ジャイアント」森川潤著

公開日: 更新日:

 2020年7月、20世紀を支えた化石燃料型の経済が気候変動型の経済へとシフトする象徴的な出来事が起きた。エネルギー界の王座に君臨し続けてきたエクソン・モービルを抜き、名の知られていない地方のエネルギー企業が時価総額でトップに立ったのだ。その企業とはネクステラ・エナジー。アメリカの電力会社で、20年かけて風力発電や太陽光などの再生可能エネルギーの普及に努めてきた企業だった。

 本書では、エネルギー業界の新たな盟主へと躍り出てきた企業たちをグリーン・ジャイアントと名付け、その台頭を記している。

 各国で生まれているグリーン・ジャイアントには共通点があるという。例えば、イタリアで再エネに取り組むエネル。同社は現在、世界最大の売上高を持つ電力会社となっているが、誕生したのは1962年で、再エネへの取り組みが始まったのは2008年のことだ。さらに、再エネの導入量でエネルに次いで世界第2位を誇るスペインのイベルドローラも、起源をたどれば1世紀前まで遡ることのできる老舗電力会社であり、2001年から再エネへの巨額投資をスタートしている。

 1世紀前に設立されたネクステラ・エナジーも含めて、今世界を席巻している再エネ企業はいずれもベンチャーではない。旧来のエネルギー企業が、この20年ほどで再エネに向けて“転身”してきたのだ。

 現在、再エネのフロンティアは「海」にあり、洋上風力発電のプロジェクトが各国で進んでいるが、世界で初めて着手したのは北欧の小国デンマーク。これを手掛けたのも、創業約50年という石油会社であり、2025年には再エネ比率100%を目指すという。脱炭素の最前線が見えてくる。

(文藝春秋 1012円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    N党・立花孝志氏に迫る「自己破産」…元兵庫県議への名誉毀損容疑で逮捕送検、巨額の借金で深刻金欠

  2. 2

    高市内閣は早期解散を封印? 高支持率でも“自民離れ”が止まらない!葛飾区議選で7人落選の大打撃

  3. 3

    箱根駅伝は「勝者のノウハウ」のある我々が勝つ!出雲の7位から良い流れが作れています

  4. 4

    女子プロレス転向フワちゃんいきなり正念場か…関係者が懸念するタレント時代からの“負の行状”

  5. 5

    高市首相「午前3時出勤」は日米“大はしゃぎ”会談の自業自得…維新吉村代表「野党の質問通告遅い」はフェイク

  1. 6

    歪んだ「NHK愛」を育んだ生い立ち…天下のNHKに就職→自慢のキャリア強制終了で逆恨み

  2. 7

    我が専大松戸は来春センバツへ…「入念な準備」が結果的に“横浜撃破”に繋がった

  3. 8

    学歴詐称問題の伊東市長より“東洋大生らしい”フワちゃんの意外な一面…ちゃんと卒業、3カ国語ペラペラ

  4. 9

    村上宗隆、岡本和真、今井達也のお値段は?米スカウト&専門家が下すガチ評価

  5. 10

    自死した元兵庫県議の妻がN党・立花孝志党首を「名誉毀損」の疑いで刑事告訴…今後予想される厳しい捜査の行方