「鯨の岬」河﨑秋子著

公開日: 更新日:

 札幌に暮らす専業主婦の奈津子は、共働きの息子夫婦が帰宅するまで、小学3年の孫・蒼空の面倒を見ている。ある日、蒼空が動画を見て大笑いする。見せられた動画は打ち上げられた鯨が腐って爆発する映像だった。それのどこがおもしろいのか分からない奈津子だが、学校教師の父親の転勤で霧多布に暮らしていたときにクジラの爆発を見たことと、そのにおいまで思い出す。

 数日後、釧路の施設に入っている母親に面会に行った奈津子は、釧路駅に止まっていた花咲線に思わず乗り込み、半世紀以上前に暮らした霧多布の街に降り立つ。懐かしかった当時の思い出をかみしめながら1泊した奈津子だが、自分の記憶が間違いだったことに気づく(表題作)。

 発表する作品が次々と各賞を受賞する注目作家による心揺さぶる作品集。

(集英社 627円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元横綱・三重ノ海剛司さんは邸宅で毎日のんびりの日々 今の時代の「弟子を育てる」難しさも語る

  2. 2

    矢沢永吉&甲斐よしひろ“70代レジェンド”に東京の夜が熱狂!鈴木京香もうっとりの裏で「残る不安」

  3. 3

    巨人・岡本和真を直撃「メジャー挑戦組が“辞退”する中、侍J強化試合になぜ出場?」

  4. 4

    “最強の新弟子”旭富士に歴代最速スピード出世の期待…「関取までは無敗で行ける」の見立てまで

  5. 5

    “文春砲”で不倫バレ柳裕也の中日残留に飛び交う憶測…巨人はソフトB有原まで逃しFA戦線いきなり2敗

  1. 6

    【独自】自維連立のキーマン 遠藤敬首相補佐官に企業からの違法な寄付疑惑浮上

  2. 7

    物価高放置のバラマキ経済対策に「消費不況の恐れ」と専門家警鐘…「高すぎてコメ買えない」が暗示するもの

  3. 8

    福島市長選で与野党相乗り現職が大差で落選…「既成政党NO」の地殻変動なのか

  4. 9

    Snow Manライブで"全裸"ファンの怪情報も…他グループにも出没する下着や水着"珍客"は犯罪じゃないの?

  5. 10

    今の渋野日向子にはゴルフを遮断し、クラブを持たない休息が必要です