「突破屋」安東能明著

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「突破屋」安東能明著

 捜査2課が担当するのは、詐欺や通貨偽造、贈収賄といった金銭・経済・企業犯罪などいわゆる「知能犯」と呼ばれる犯罪。小説やドラマでは殺人を扱う捜査1課が花形のように見えるが、知能犯を担当する2課はエリート中のエリートとして一目置かれ、本書でも「2課を経験すれば、どの部署もこなせる。逆はない」と評されている。

【あらすじ】五来太郎は警視庁捜査2課第4知能犯捜査第3係統括主任。「突破屋」の異名をとる腕利きの警部補、38歳。捜査会議の最中、五来宛てに外線が入る。相手は名乗らず、「ちよまつ。接待……やられてるよ」とだけ告げて電話を切った。密告のほとんどがガセだが、五来は「マブネタ」だと直感し、築地の高級料亭・千代松へ急行する。そこで目撃した2人の男を確認、尾行するべく捜査員を手配した。

 その結果、1人は国土運輸省港湾航空局港湾等周辺整備室長の松永幹夫、もう1人は準ゼネコンの峯岡建設営業本部長の本条修一と判明。これは建設会社による国家公務員への接待に違いなく、かなり大きな贈収賄事件に発展するだろうと予想された。

 だが、確実な証拠をつかまない限り起訴まで持っていけない。五来以下捜査員たちは粘り強く2人の行動確認を行い、証拠になるような手掛かりがないかと地道な捜査を続けていく。しかし、松永も本条も防御が堅く、なかなか突破口が見いだせない。しかも五来を出し抜こうとする係長が功を焦って思わぬ行動に出る……。

【読みどころ】派手な立ち回りこそないが、容疑者たちの周囲に罠を張り巡らせ徐々に追い詰めていく地道な捜査がスリリングに描かれ、あまり取り上げられることのない贈収賄事件の捜査実態が見えてくる。 〈石〉

(潮出版社 1100円)

【連載】文庫で読む 警察小説

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