「昭和の女帝」千本木啓史著/ダイヤモンド社(選者:佐高信)
しかし、鎌田の系譜を継いで抵抗の精神を失わない千本木が「自民党の裏面史」を書いた。実在の女性フィクサーがモデルである。おもしろくないはずはないのだが、他の人物の多くは実名なのに、児玉誉士夫や田中角栄が仮名となっている。残念ながら、それが減点対象になる。
それでも、戦争犯罪人として巣鴨プリズンに収容された東條英機や岸信介の生活について、次のように書いているところなどは実に興味深い。
「日本の拘置所と巣鴨プリズンとの最大の違いは食だった。巣鴨プリズンの食事は西洋風で、例えば昼食は、黒パン、チーズ、コンビーフとじゃがいもの煮つけ、ココア、それに季節の果物が付いているといった具合で、国内の食料事情からすれば王侯貴族並みだ」
女帝は、正力松太郎を「原子力の父」とすれば、「原子力の母」だという。そして、田中角栄を思わせる加山鋭達が首相となって電源三法を成立させ、正力や中曽根康弘のお株を奪って原発推進の旗手になる。
巻頭の登場人物紹介によれば、「真木レイ子」は「保守本流の女帝」で、加藤紘一を最も可愛がったらしい。私は加藤と同郷で親しかったが、加藤から女帝の話を聞いたことはない。ただ、女帝にインタビューした石井妙子の「昭和史玉手箱」を加藤夫人に見せたら、いろいろ世話になったと言っていた。現在の首相、高市早苗は保守の傍流も傍流だから、女帝はハナもひっかけなかっただろう。

















