著者のコラム一覧
桧山珠美コラムニスト

大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」に「今月のダラクシー賞」を長期連載中。

五輪報道にかまけて戦争関連番組をないがしろにしたテレビに絶望

公開日: 更新日:

所ジョージの父親を取り上げた「ファミリーヒストリー」はよかったが…

 10日「ファミリーヒストリー 所ジョージ~人生を楽しもう!生き方の原点は~」(NHK)を興味深く見た。当初「見てもたいしたヒストリーないから」と笑っていた所だが、終わり間際には「もう何度もこれ見たい」と自分のルーツを知って、感慨もひとしおの様子だった。

 53歳の若さでこの世を去った所の父は陸軍航空整備兵として戦地に赴き、中国に抑留されたこともあった。戦後、警察予備隊にいたが、後に銀行員になった。母との結婚に際して岳父から「警察は嫌い」「持ち家のないやつに娘をやれない」と言われたからで、転職し、家もほぼ手作りで建てたというから驚く。

 父の足跡をたどり同僚の話を聞き終えた所、「ちょっと前だったんだね、このすごい話。うちの親父の代でしょ。もっと後、2代3代前だったらわかるけど俺の親父じゃん。すごい時代だな」と。戦後76年とはいえ、そんなに遠い昔のことではないと実感した。

NHK高瀬耕造アナは決定的なミスで謝罪

 8月ジャーナリズムという言葉があるように、毎年、この時期は戦争関連の番組が多く放送されるのに、今年は五輪に忙しいのか、関連番組が少なくなったような……。

 8月6日のことだ。広島に原爆を投下されたこの日は毎年、平和記念式典が行われる。「おはよう日本」を見ていたら、毎日、朝ドラ送りに熱心な高瀬耕造がいつものように朝ドラ送りをした。

「はい、この後は『おかえりモネ』です。お願いします」と、お隣の森下絵理香にむちゃぶりし、高瀬が引き取って「よい週末を」で終了したが、その後に映ったのは「おかえりモネ」ではなく原爆ドーム。

 高瀬のうっかりに視聴者が反応し、NHKには抗議が殺到したようで、10日の放送で高瀬は神妙な面持ちで「式典とは関係のない連続テレビ小説についてコメントしてしまいました」と謝罪した。

「平和記念式典」はNHKにとってどうでもいいというわけではないだろうけど、これは痛恨のミスだ。もっとも、「核兵器のない世界の実現に向けて力を尽くします」の部分を読み飛ばした人もいたけど……。

 同時間帯の民放は五輪一色。

 フジテレビ系「めざまし8」などは、最新ニュースワードランキングで1位の「原爆投下から76年」に触れ、MCの谷原章介が「もう76年の日々が経ってしまったんですね。改めてこの広島への原爆投下、そして長崎への投下、僕らはこの出来事を忘れず胸に刻んで、平和への思いを新たにしたいですし、今、行われております平和の祭典オリ・パラの行方、見守っていきましょう」とコメントし、すぐに五輪の話題に変えた。

 NHKは五輪が終わった途端に思い出したかのように戦争関連の番組をやりだした(再放送も多いが……)。

 ジャーナリズムの使命はそっちのけ、五輪を最優先したことの罪滅ぼしのつもりか。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    亡き長嶋茂雄さんの長男一茂は「相続放棄」発言の過去…身内トラブルと《10年以上顔を合わせていない》家族関係

  2. 2

    朝ドラ「あんぱん」豪ちゃん“復活説”の根拠 視聴者の熱烈コールと過去の人気キャラ甦り実例

  3. 3

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  4. 4

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  5. 5

    「時代と寝た男」加納典明(17)病室のTVで見た山口百恵に衝撃を受け、4年間の移住生活にピリオド

  1. 6

    中居正広氏に降りかかる「自己破産」の危機…フジテレビから数十億円規模損害賠償の“標的”に?

  2. 7

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  3. 8

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 9

    「こっちのけんと」の両親が「深イイ話」出演でも菅田将暉の親であることを明かさなかった深〜いワケ

  5. 10

    長嶋一茂が父・茂雄さんの訃報を真っ先に伝えた“芸能界の恩人”…ブレークを見抜いた明石家さんまの慧眼

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  2. 2

    大谷 28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」とは?

  3. 3

    学力偏差値とは別? 東京理科大が「MARCH」ではなく「早慶上智」グループに括られるワケ

  4. 4

    ドジャース大谷の投手復帰またまた先送り…ローテ右腕がIL入り、いよいよ打線から外せなくなった

  5. 5

    よく聞かれる「中学野球は硬式と軟式のどちらがいい?」に僕の見解は…

  1. 6

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  2. 7

    進次郎農相の「500%」発言で抗議殺到、ついに声明文…“元凶”にされたコメ卸「木徳神糧」の困惑

  3. 8

    長嶋茂雄さんが立大時代の一茂氏にブチ切れた珍エピソード「なんだこれは。学生の分際で」

  4. 9

    (3)アニマル長嶋のホームスチール事件が広岡達朗「バッドぶん投げ&職務放棄」を引き起こした

  5. 10

    米スーパータワマンの構造的欠陥で新たな訴訟…開発グループ株20%を持つ三井物産が受ける余波