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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

5年目で悪性リンパ腫再発を繰り返しても20年で完治させた患者がいる

公開日: 更新日:

 Mさん(93歳・女性)はO商店街ではよく知られた元気なおばあさんでした。糖尿病がありましたが、本人はあまり気にされていませんでした。ある時、右の頚部リンパ節とへんとうが腫れ、近所の耳鼻咽喉科から紹介されて来院。「悪性リンパ腫びまん性大細胞B細胞型、ステージⅡ」と診断されました。高齢でしたが、3分の1量のCHOP療法を行い、3回目の治療でリンパ腫はほとんど消失、7回の治療で終了としました。治療の影響で一時、髪の毛が抜けてしまいましたが、その後は回復、完治され、終始元気に過ごされました。

 治療後、Mさんはご近所の友人の命日にはお宅に出かけて仏壇に手を合わせ、おまんじゅうやおせんべいをいただいて帰っては、糖尿病を気にせず夜中に食べたり、訪問したヘルパーさんが散歩に誘っても断り、帰るのを待ってからひとりで散歩に出かけたりするなど、たくさんのエピソードを残されたかわいいおばあさんでした。

 悪性リンパ腫が完治して通院もなくなりましたが、Mさんが100歳になられた時、娘さんたちと外来に来られ、一緒に記念写真を撮って下さいました。いつもニコニコされているのに、写真撮影の時だけは「笑って」と言っても、緊張されて笑顔をつくらなかったのが印象的でした。Mさんは102歳まで再発なく天寿を全うされました。

 悪性リンパ腫は、体の状態が悪くなければ何歳でも治療可能で、薬で完全に治癒する可能性がある病気なのです。

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