著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

「変だ」と思ったら言ってくれる「チェッカー」を持とう!

公開日: 更新日:

「私はYさんから『チェッカー』に指名されました」

 なんのことかと思ったが、説明を受けて、すばらしいことだと感心した。

 知人がいう。知人と85歳になるそのY氏は、編集者と著者の関係。つきあいは40年近くになる。そのY氏が最近、軽度のアルツハイマー型認知症と診断された。

「オレ、認知症になったんだよ」とある日電話で告げられて、知人はどんな言葉を返せばいいのかわからなかった。しかし、Y氏は「長生きすりゃ、半分くらいは認知症になるんだから、オレだけは例外なんて思っていなかった」と妙に明るい。知人の戸惑いをよそに彼はこう続けた。

「オレの言動でなんか変だと思ったら、チェックして遠慮せずに言ってほしい。裸の王様にはなりたくないからね」

 以来、知人はこのリクエストを受け入れ、折あるごとに「チェッカー」として「変」を指摘しているという。同時にやや耳が遠くなったY氏に配慮し、会うときは大きな声で話せる広めの喫茶店、あるいは彼のオフィスで会うことにしている。Y氏は知人の指摘に素直に耳を傾け、脳を悩ませ「軌道修正」を心がけているという。

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