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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

「コロナで死ぬのは嫌」気になる患者と初めて言葉を交わした

公開日: 更新日:

 診察の予約日になって、GさんはまたN病院に出かけました。マスクを着けて電車に乗り込むと、乗客は皆マスクをしています。車内では話し声ひとつ聞こえず、次の駅名を告げる車内放送だけが響いていました。

 病院に着くと、入り口に消毒用アルコールが置いてあったのでGさんは手にとってすり込みました。患者も病院の職員も皆マスクをしています。

 いつもと同じように、採血してから診察室前で順番を待ちます。マスクをしているためか、やはり話し声はありません。聞こえるのは、時折、次の患者の名前を呼ぶ声だけです。

 Gさんは他の患者とは離れて長椅子に座ったのですが、急に隣に座ってきた患者が「コロナ嫌ですなあ。気をつけましょう」と声をかけてきました。見ると、マスクをしたJさんでした。初めて声をかけられたのです。

 Gさんはとっさに「お宅こそ、どうも」と返事をしました。Jさんは渋い顔で「私は食道がんで治療しています。コロナで死ぬのは嫌です。ではまた会いましょう」と言って出て行かれました。 この2年間ずっと毎回のように会っていても、お互いまったく口を開くことはなかったのに、コロナが言葉を交わすきっかけとなったのです。

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