飲んだら必ず死ぬと言われ…歌手の仲雅美さん肝不全・腎不全との闘い

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人工透析の寸前で持ちこたえている

 2~3カ月入院して危機を脱出した後、今度はリハビリ専門病院に入院しました。むくんだ体を動かして、体力をつけたり、禁酒も含めて普通の生活に戻るまで3カ月以上過ごしました。

 そこでの患者は、自分も含めて血小板が普通の人の6分の1ぐらいしかないので、血が止まりにくく、手術が簡単にできません。そんな中で、高齢のおじいさんが一人、腫瘍があっても手術できずに何年も入院した末に衰弱して亡くなりました。少し前に家族からもらった誕生日プレゼントのセーターを着ることもなくね……。そんな姿を目の当たりにした時、「何年も病院で過ごすのはつら過ぎる。早く体力をつけてここを出よう!」と強く思い、マジメにリハビリに取り組んで優等生になりました。

 薬は慢性肝不全の人のための栄養剤「アミノレバン」を飲んでいました。一生飲み続ける薬だと言われ、いろんな味を日替わりで楽しんでいましたが、アミノ酸は腎臓に負担をかけるので、排泄できないものが少しずつ手先や足先に蓄積する弊害が残り、現在は服用中の薬はありません。腎臓は人工透析になる寸前のところでなんとか持ちこたえています。

 医師から「飲んだら必ず死ぬ」と言われて以来、お酒はきっぱりやめましたが、それでも今現在、手足の指先がしびれたり、たまに痛みが出たりすることがあります。これがひどくなってくるといわゆる「痛風」ってやつです。

 病気をしてひとつ思ったのは、「習い事は無駄にならない」ということです。小さい頃、日本舞踊を習っていて、できないことも訓練するとできるようになる経験をしていたから、病気をして思い通りに動けない時にも「これはできたはずだ」と思えば努力ができる。きついけれど、そのきつさを通らないと体が慣れないことを知っているのです。「芸は身を助く」という言葉は、本来は、いざという時に芸が経済的な支えになるという意味だけれど、自分の場合は精神的な支えになりました。

 多額の負債で離婚することになった妻と娘には、悪いことしたなと思っています。

 でも最近、自分の誕生日に娘夫婦が食事に誘ってくれ、お孫ちゃんと一緒に祝ってくれました。

(聞き手=松永詠美子)

▽仲雅美(なか・まさみ)1950年、東京都生まれ。70年に歌手デビュー。テレビの新人紹介コーナーで歌う姿が木下恵介監督の目に留まり、71年のTBSドラマ「冬の雲」に大抜擢。同年、ロシア民謡「ポーリュシカ・ポーレ」を歌って大ヒット。73年には映画「同棲時代-今日子と次郎-」、74年には映画「愛と誠」などに出演。75年からは花登筺主幹の「劇団喜劇」に在籍し舞台と並行して「あかんたれ」「鮎のうた」などに出演。2019年には小倉一郎、江藤潤、三ツ木清隆らとユニット「フォネオリゾーン」を結成。「クゥタビレモーケ」でCDデビュー。YouTubeチャンネルも開設。

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