コロナ後遺症は感染で起こる「炎症」が関係 嗅覚障害のプロセスが判明

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「研究報告によると、感染3日でAdcy3という嗅覚生理に関係する遺伝子の発現が抑制され、ウイルスが消失した感染10日後でも回復しませんでした。これは、感染によって細胞核内の染色体上にある嗅覚受容体の区画破損など遺伝子の構造的異常が生じることが一因だと考えられています。同様の構造的異常はヒトの嗅覚組織でも認められました。新型コロナ患者の12%超に長期持続する嗅覚障害が残るのはこのためだと考えられます」

■脳にも影響する可能性

 今回、明らかになった新型コロナ患者に嗅覚障害が起こるプロセスは、ほかの後遺症にも当てはまる可能性がある。厚労省の「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」では、代表的な罹患後症状=後遺症として「全身症状」「呼吸器症状」「精神・神経症状」「その他の症状」の4つに分類されている。中でも、倦怠感、記憶障害、集中力低下(ブレインフォグ)、不眠、頭痛、抑うつといった後遺症が、今回の研究と大きく関係しているのではないかとみられているのだ。


「今回の研究では、ウイルスに感染させたハムスターの血清を別のハムスターに注入することで嗅覚障害を起こす病態が生じました。このことから、新型コロナウイルスは感染した細胞から別の細胞に感染拡散するのではないと推察され、嗅覚障害など全身にさまざまな症状が出るのは、感染で起こる免疫細胞の反応によって放出された炎症性サイトカインが、血液などの体液を介して全身に広がり、細胞の遺伝子レベルの変化を生じさせるためという可能性が考えられます。嗅覚障害に関係する嗅神経細胞は、脳の多くの領域とつながっています。ですから、鼻腔で起こった免疫細胞の反応=炎症が脳にも影響を与え、嗅覚受容体の転写が元に戻るのを妨害する『細胞核記憶』のような現象が相まって、倦怠感、記憶障害、ブレインフォグ、抑うつといった後遺症に関係している可能性があるのです」

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