著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学元教授、医事評論家

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

「サル痘」が世界に感染拡大! ラクダ痘・天然痘の関係は…医療情報学教授が解説

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 新型コロナはようやく沈静化してきたが、その裏で「サル痘」なる病気が、じんわりと広がり始めている。先月初旬から、北米と西ヨーロッパを中心に患者が増え続けており、累計で1200人を超えている。サル痘ウイルスという、天然痘ウイルスの親戚による感染症だ。初期には発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどの症状が見られ、その後は大豆ほどの大きさの発疹が顔、手、体幹などに生じてくる。

 中央アフリカや西アフリカの風土病だが、ウイルスは1958年にデンマークで発見された。ポリオワクチンの研究のために飼われていたサルが、天然痘のような症状で次々と死んだことから発見に至ったのである。

 先進国では、流行地に滞在した人が帰国後に発病することがまれにあったが、これほどの患者が、同時に、かつ広域に、発生したことはない。そのため某国によるバイオテロではないか、という噂がネットで流れたりしている。だが、その可能性は低いだろう。

 というのも、サル痘は感染力が弱いうえに重症化のリスクも低く、テロに使うにしては効率が低すぎるからである。接触感染が主であるため、医療従事者などでない限り、感染の心配はほとんどない。致死率は、アフリカでは子供を中心に10%程度といわれているものの、先進国ではいまのところ1人も死んでいない。それに発疹もさほど酷くない。ネット上のサル痘の記事を見ると、全身が大粒の発疹で覆われた、悲惨な患者の写真が必ず出てくる。それらの大半は、実はサル痘ではなく、天然痘患者の写真である。サル痘では、多くの場合、発疹は全身でせいぜい20個程度までである。それにアバタが残る心配もほとんどない。

 日本では4類感染症(全数報告)に指定されており、患者は自宅療養も可能だ(ただしタオルや寝具を共有しないなどの注意が必要)。全治には数週間を要する。

 テロという点では、世界の研究者たちが恐れているのは、ラクダ痘(ラクダの天然痘)のほうだ。ラクダ痘ウイルスは、人の天然痘ウイルスともっとも近いウイルスなのである。

 いや待て、サルの方がラクダより人間に近いではないか──。そんな声が聞こえてきそうだが、サル痘ウイルスは、本来はげっ歯類、つまりネズミなどを宿主にしているらしい。たまたま不運なサルからウイルスが発見されたため、「サル」と命名されたに過ぎない。

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