がんとの共生に「抗がん剤」は必ずしも必要ない 在宅医療の名医が語る「薬」と「延命」

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 その後、山中医師は抗がん剤に代えて全身の炎症反応を減らし、食欲回復効果を期待してステロイド剤導入を決めた。

「結果、2週間後には食欲回復により伊東さんの体重は5キロ増え、笑顔が多くなりました。しかも伊東さんから、2カ月後の画像検査でがんが少し縮小しているとがん治療専門の先生が驚かれたとの報告を受けました」

 結局、余命数カ月と言われた伊東さんは、1年後も元気で孫の顔も見ることができた。

「皆さんに知ってもらいたいのは、『抗がん剤』だけががん治療ではないし、延命につながる唯一の道ではないということです。副作用がつらくても、それをお医者さんに言うと積極的治療を受けられなくなるかもしれない。そう思って、副作用のつらさすら言えない患者さんもたくさん見てきました。『頑張る』治療が良いとは限りません。がんが良くなっても、体が死んでしまっては元も子もないのです」

「積極的ながん治療だけが延命」というのは間違いだ。穏やかで苦しまない、そして今を大事にする治療を選択することが、結果として「延命」につながることもある。

 それは、自宅で幸せながん末期のみとりを多く見てきた在宅診療所の医師だから言えることだと山中医師は感じている。

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