著者のコラム一覧
下山祐人あけぼの診療所院長

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

予後宣告は3カ月…自宅で思う存分の「口げんか」すら愛おしい

公開日: 更新日:

「もう私だめ、こんなにつらいことできない」

 そう言って部屋を飛び出していく奥さまを尻目に、旦那さんは布団をかぶってただ黙っているのみで、私もどうすればいいのか困惑したことを覚えています。

 後から聞いたことですが、当初、患者さん自身が奥さまの苦労を考えて入院も考えたそうです。しかし予後宣告を3カ月とされ、残された時間を自宅で過ごしたいという思いが高まり、延命措置も断って自宅で最期まで過ごすことを選ばれたのでした。

 ひょっとして、そんな奥さまとこれまで通り口げんかをして、自分の家で過ごしたいという思いだったのかも。自宅にいないと家族とけんかもできないのですから。

 1カ月ほど経ったある日、奥さまが私にぽつり。

「一番可哀想なのは声が出ないことね。言いたいことも言えないから」

 看取られるその時まで、思う存分口げんかして欲しい。そう願わずにはおられませんでした。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  4. 4

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  2. 7

    維新・藤田共同代表にも「政治とカネ」問題が直撃! 公設秘書への公金2000万円還流疑惑

  3. 8

    35年前の大阪花博の巨大な塔&中国庭園は廃墟同然…「鶴見緑地」を歩いて考えたレガシーのあり方

  4. 9

    米国が「サナエノミクス」にNO! 日銀に「利上げするな」と圧力かける高市政権に強力牽制

  5. 10

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性