著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「塩分」は心臓の健康にとってやはりマイナスといえる

公開日: 更新日:

■減塩は日本人の健康寿命の延長に貢献した

 かつて行われた、大規模な人数を長期追跡するコホート研究で、塩分摂取が多い北海道や東北などの地域では、胃がんの発生、くも膜下出血や高血圧関連疾患を発症する割合が多いことがわかりました。これを受け、厚労省や医学会が積極的に減塩対策を進めた結果、ピロリ菌対策の効果も加わっておよそ40年で胃がんは克服され、降圧薬の適切な服薬も相まって、高血圧に関係した心臓血管疾患も抑制された印象があります。

 また、減塩は心筋梗塞による死亡の抑制にも大きく貢献したと感じます。かつての日本、急性期治療が広く普及する以前は、心筋梗塞で亡くなる人が多いという事実がありました。先ほども触れたように、塩分過多は心機能を悪化させる大きな要因で、とりわけ一度心筋梗塞を起こしたり、心房細動などの慢性的な心臓疾患がある人にとっては深刻な問題です。

 そこで、軽い利尿剤やナトリウムチャネル遮断薬といった薬剤を使ったり、生活習慣で減塩を順守させるなどの治療や対策が実施され、日本人の心臓疾患による死亡数は徐々に抑えられていったと考えられます。近年は高齢化が進んだことで慢性心不全による死亡が増え、心臓疾患で亡くなる人が再び増加している状況ですが、心臓に対する減塩の効果は、日本人の健康寿命の延長に間違いなく貢献してきたといえます。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い