著者のコラム一覧
最上悠精神科医、医学博士

うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。

親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10原則~⑧⑨

公開日: 更新日:

 そもそも、「『死にたい』という訴えは『死にたくない』」という言葉もあるように、本気で死ぬと覚悟した人は誰にも何も言わずに実行してしまうとも言われています。「死にたい」という訴えは苦しさを訴えているSOSで、何のSOSかと言えば、一次感情を感じられない苦しさで、希死念慮という二次反応への回避を表現しているのです。だから、そこに「死にたいなんて言うな」などと“臭いものに蓋”をするだけでは、親の視界から訴えは消えたとしても、「『死にたい』と表現する逃げ道すら塞がれてしまった。かといって一次感情に向き合えない」お子さんは、さらに極端で危険な方向に捌け口を求める--。つまり、本当に自死に追い込みかねない危険性すらあるのだと認識しましょう。

 実際、自死行動では、感情の感度が低下する「解離」、つまり感情不全との関連も報告されています。だから、気の済むまで傾聴・共感をすることこそが本人のために望ましい関わりと言えるのです。一方で、「練炭を買い込んでいる」「部屋から遺書の下書きが見つかった」といった、自死に直接つながるような危険な兆候や行動が見られたら、「本気で死ぬ気はないんだ」と高を括るのではなく、主治医や警察、保健所や精神保険福祉センターといった行政機関にもリスクマネジメントとして相談しましょう。どちらであっても、共感なくただ正論を説くことが有害無益であることには変わりありません。(つづく)

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  2. 2

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず

  3. 3

    阪神・佐藤輝明が“文春砲”に本塁打返しの鋼メンタル!球団はピリピリも、本人たちはどこ吹く風

  4. 4

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も

  5. 5

    広末涼子「実況見分」タイミングの謎…新東名事故から3カ月以上なのに警察がメディアに流した理由

  1. 6

    参政党のSNS炎上で注目「ジャンボタニシ」の被害拡大中…温暖化で生息域拡大、防除ノウハウない生産者に大打撃

  2. 7

    国保の有効期限切れが8月1日からいよいよスタート…マイナ大混乱を招いた河野太郎前デジタル相の大罪

  3. 8

    『ナイアガラ・ムーン』の音源を聴き、ライバルの細野晴臣は素直に脱帽した

  4. 9

    初当選から9カ月の自民党・森下千里議員は今…参政党さや氏で改めて注目を浴びる"女性タレント議員"

  5. 10

    “死球の恐怖”藤浪晋太郎のDeNA入りにセ5球団が戦々恐々…「打者にストレス。パに行ってほしかった」