著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

高齢男性に多い排尿の悩み…前立腺肥大症に使われるクスリ

公開日: 更新日:

 この前立腺肥大症の治療ですが、まず日常生活に不便がなければ特に治療をすることなく経過観察で問題ありません。治療が必要な場合には、手術などの外科的治療とクスリによる治療があり、ここでは後者について紹介します。

 前立腺肥大症に用いられるクスリには、大きく分けて3種類の効き方があります。まずは①「α1受容体遮断薬」です。

 α1受容体は前立腺や膀胱の出口のところの筋肉(平滑筋)に存在しています。そこにアドレナリンが作用すると平滑筋が収縮して尿が出にくくなってしまいます。α1受容体遮断薬はその名の通り、α1受容体にひっつくことでアドレナリンが受容体にひっつくのを邪魔するクスリです。それによって平滑筋が弛緩して、排尿をしやすくする効果を発揮します。イメージ的には、「1回ですっきり出す」という感じです。

 α1受容体は、前立腺や膀胱だけでなく血管の平滑筋にも存在しています。そのため、こういったクスリを使用すると血管の平滑筋が弛緩して血圧が低下するため、場合によってはめまいやふらつきといった症状を起こす可能性があり、重度になると起立性低血圧といって立ち上がったときに倒れてしまうこともあります。じつは以前、当連載高血圧について触れたときに、α1受容体遮断薬を取り上げました。その成分の中には前立腺肥大症ではなく降圧薬として用いられるものもあるのです。

 α1受容体遮断薬は、前立腺肥大症と診断された際の第1選択となることが多いです。使い始めから効果が出るまでの期間も比較的短いので、効果を実感しやすいクスリだといえます。

 次回も前立腺肥大症に用いられるクスリについてお話しします。

【連載】高齢者の正しいクスリとの付き合い方

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも