著者のコラム一覧
田中里佳順天堂医院足の疾患センター長

2002年東海大学医学部卒業、04年同大学形成外科入局、06年米国ニューヨーク大学形成外科学教室留学、12年順天堂大学医学部形成外科学講座准教授、医局長を経て現職を務める。

糖尿病で足の切断を告げられた…外来治療で回避する方法はある?

公開日: 更新日:

 そこで近年、バイオフィルムの再形成を防ぐ創傷管理の方法として推奨されているのが「創傷衛生(ウンドハイジーン)」です。

 具体的には、不織布ガーゼに泡立てたせっけんをつけ、患部を毎日欠かさずよく洗います。その際、創面に点状の出血斑が見られる程度の強さで行うのがポイントです。バイオフィルムの再形成を防ぐために、抗菌作用をもつ外用薬や創傷被覆材を処方し、傷の状態によっては、外来で「デブリードマン」と呼ばれる、患部に付着した壊死(えし)組織やバイオフィルムを完全に除去して傷の治りを促す外科処置を追加で行います。

 靴の見直しも重要です。日々の生活に欠かせない歩行は、足の指先に過度な負荷がかかって傷の治癒を妨げる要因になりかねません。治療期間中は、踏み返し動作を制限して創傷部位にかかる圧力を減らす「除圧サンダル」を着用する必要があります。

 冒頭の女性は、月1~2回の外来受診に加え、外来における簡単な外科的処置と抗生剤の内服と除圧サンダルを履いていただき、自宅でのウンドハイジーンを約3カ月間継続したところ、皮膚の潰瘍や骨髄炎が入院治療をせずに完治して足の切断を免れ、後に職場復帰を果たしました。

 糖尿病性足病変により足の切断が必要と告げられても、外来治療だけで完治できるケースもあります。靴擦れや胼胝(べんち)など、切断のきっかけになる小さな傷を見逃さないよう毎日足の状態をチェックし、異常があれば早めに病院を受診してください。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    日本ハムが新庄監督の権限剥奪 フロント主導に逆戻りで有原航平・西川遥輝の獲得にも沈黙中

  2. 2

    白鵬のつくづくトホホな短慮ぶり 相撲協会は本気で「宮城野部屋再興」を考えていた 

  3. 3

    DeNA三浦監督まさかの退団劇の舞台裏 フロントの現場介入にウンザリ、「よく5年も我慢」の声

  4. 4

    藤川阪神の日本シリーズ敗戦の内幕 「こんなチームでは勝てませんよ!」会議室で怒声が響いた

  5. 5

    佳子さま“ギリシャフィーバー”束の間「婚約内定近し」の噂…スクープ合戦の火ブタが切られた

  1. 6

    半世紀前のこの国で夢のような音楽が本当につくられていた

  2. 7

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 8

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  4. 9

    田原俊彦「姉妹は塾なし」…苦しい家計を母が支えて山梨県立甲府工業高校土木科を無事卒業

  5. 10

    プロスカウトも把握 高校球界で横行するサイン盗みの実情