ストレスが原因と思っていたら……女優の春風ひとみさん片側顔面痙攣との闘い

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春風ひとみさん(女優/63歳)=片側顔面痙攣

 まぶたの下から頬にかけての痙攣が始まったのは5年ほど前でした。そんな時はゆっくり休んで疲れを取れば止まっていましたが、だんだん頻繁になって、眠っていても止まらなくなったんです。

 心配になって、近所の脳神経外科に行ってMRIを撮ってもらったら、「血管が神経を圧迫していないし、腫瘍もないからストレスからくるのかもしれません」と言われ、漢方薬を処方されたんですね。でも一向に良くならないので、しばらくして別の脳神経外科に行ったのですが、やはり「どこも悪いところはない」と言われました。

 それで、マッサージと鍼灸に通いました。最初は施術を受けると痙攣が止まっていたのですが、次第に効果がなくなってきて、もしかしたらほかに原因があるかもしれないと大学病院の眼科に行ったんです。

 そこで診察してくれた医師から「片側顔面痙攣の疑いがあるので、脳神経外科で診てもらいましょう」と言われ、MRIを撮ったら、「完全に血管が神経に癒着・圧迫していますね。それが原因です」と即断されました。

 2018年に「マイ・フェア・レディ」、22~23年は「天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~」など、長期間の舞台や地方公演が続いていまして、「シスター・アクト」の終盤は左目が開けづらくなっていました。

 23年にジョン・ケアード演出の「ジェーン・エア」に出演したときは、頬が引っ張られる感じで鏡を見ると自分の顔が曲がって見えるんです。その時はメイド頭のフェアファックス夫人役で、あまり表情を動かさない役でしたからこの時が一番つらかったです。

 その後、「千と千尋の神隠し」(湯婆婆/銭婆役)では、国内公演とロンドン公演が並行して行われその両公演に出演し、ロンドン公演は夏木マリさんとダブルキャストで務めました。そのため、何かあったらみなさんに迷惑をかけることになります。担当医からは、「完治するには手術するしかありません。ただ、仕事が一区切りするまでは、ボトックス注射で切り抜ける手もあります」という提案をいただきました。

 ボトックスは表情じわなどを改善する美容治療法で、筋肉の働きを弱める薬です。顔の筋肉を止めてしまったら自然の表情が出なくなるのではと、とても不安でしたが治療を受けることにしました。

 即効性があり、一度注射すると普通は4カ月もつところ、私の場合は3カ月しかもたないんです。しかも片方だけなので、笑ったりすると左目が開いたままで、右目は閉じてしまう……。自分で顔の右と左のズレがわかるんです。

 幸いなことに、湯婆婆/銭婆は付け鼻ありの濃いメークでした。ボトックス効果も、公演の初めに担当医に最前列で舞台を見てもらい、「全然分からないから気にすることはない」とお墨付きをいただきました。

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