「心不全」は感覚器の障害につながる…就労継続には理解が必要
また、富山大学の研究では、心臓血管疾患の既往のある高齢者は、難聴のリスクが約2倍に増加するという報告もあります。
心筋梗塞などの心臓血管疾患や心不全によって心機能が低下すると、全身の血流が悪化します。内耳には音を感知するための毛細血管がたくさん張り巡らされていますが、それらは非常に微細なため、血流が悪化して血液の供給が減少すると、毛細血管が損傷して音の感知能力や認識能力が低下し、聴覚障害につながるのです。
聴覚障害があると、周囲との会話が困難になって仕事に支障を来し、働くことをあきらめてしまうケースが少なくありません。その結果、社会的孤立や精神的苦痛が生じる可能性が高くなります。もともと心不全による行動制限があるうえ、さらに周囲との交流がなくなって孤立が深まってしまうのです。
孤独によって感じるストレス=精神的苦痛は、アドレナリンやコルチゾールの大量分泌を促し、心拍数を増加させたり血圧を上昇させるなどして、心臓血管疾患のリスクをアップさせます。心臓血管疾患や心不全があると聴覚障害のリスクをアップさせ、聴覚障害は心臓血管疾患や心不全の発症や悪化を招く……両者は深く密接に関係しているからこそ、治療と仕事を両立できるような環境整備が求められるのです。