(28)実家に残された高齢猫4匹は東京へ連れて帰ることに決めた
その責任の重さを引き受けるには大きな決心が必要だった。しかし、母がもうこの家に戻ってくることはないだろう。思いきるしかない。
猫たちをキャリーケースに入れて飛行機で東京に連れて帰る段取りを考え始めた。東京の猫たちに会わせる前に健康診断も済ませておかなければならないだろう。空港までどうやって移動するか、そして羽田空港からどうやって自宅に運ぶか。目の前の片付けより先に、命あるものの明日のことを私は考えていた。
相談する中で「実家の外に放していけばいいのに」とあっさり言った人がいた。とんでもない。私は怒り狂った。家猫を外に出すことは、すなわち死を意味する。そんな無責任なことは絶対にやってはならないし、遺棄は犯罪だ。何よりも、母がかわいがっていた猫たちにはずっと幸せに暮らしてもらいたかった。
友人たちの助けも借りながら、4匹の猫たちを飛行機ですべて東京に運び終えるまでに、決心から2週間かかった。
まずは安心したが、これから父の逝去後の事務作業と、母の施設探しを並行しておこなわなければならなかった。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。