HIVは脳を攻撃…なぜエイズウイルスはグリア細胞に感染するのか
とくに注目なのがHIVの標的が「グリア細胞」であることだ。ポリオやヘルペスのようにニューロンを攻撃するウイルスは多いが、HIVはグリア細胞のみを攻撃する。なぜか。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授の根来秀行医師が言う。
「HIVは他のウイルスと同様に、特定のタンパク質を介して細胞表面に結合し、細胞内に侵入します。そして、細胞のDNAを乗っ取って、自らを複製するウイルス工場へと変えてしまうのです。複製されたウイルスは細胞から飛び出し、他の細胞へと次々と感染を広げていきます」
ところが、ニューロンの表面にはHIVが結合するための受容体が存在しない。そのため、HIVはニューロン自体に感染することができない。
「HIVの結合に必要なタンパク質がCD4です。これは白血球の一種であるT細胞の表面に存在する目印のようなタンパク質で、ヘルパーT細胞に多く見られます。このCD4を持つリンパ球はCD4陽性リンパ球と呼ばれ、免疫系において攻撃の指令を出す司令塔のような働きをしています」