胸の内を打ち明けてもらうために在宅医療のスタッフがやっていること
紹介を受けたその日のうちに、ご本人に電話で連絡を取りましたが、体調が非常に悪いため、すぐに来てほしいというご依頼がありました。急いで自宅に向かい、診察を始めると、吐き気に悩まされている様子でした。しかし、患者さんは積極的に自分の症状を話すのが苦手な性格で、これまで病院の医師にもなかなか相談できなかったといいます。実際、私たちが電話で連絡した際に、つらさに耐えかねて症状を訴え、助けを求めたとのことでした。
紹介してくださった整形外科の医師からは、この患者さんは、「○○が悪い」など病状に関するネガティブな言葉に敏感で、気落ちしやすいことが伝えられました。そのため、診察では信頼関係を築きながら、悩みを打ち明けてもらいやすい環境をつくることが重要だと感じました。また、病状の説明に関しては、慎重に言葉を選ぶことが求められます。
患者さんの息子さんは医療従事者で、遠方で働いているため、忙しくて年に数回しか会えません。息子さんには心配をかけまいと、体調に関する相談や連絡を控えているとのことでした。弱っている時でさえ、周囲の人々、特に大切な人に対して気を使い、素直に助けを求めることができない患者さんがいるのです。だからこそ、患者さんが、私たち訪問診療のスタッフには胸の内を打ち明けてくれることを願っています。診療時には、患者さんの最近の楽しみや過去の話を交えながら会話し、少しでも心の距離を縮めるよう心掛けています。
在宅医療では、患者さん一人一人の性格や家庭の事情を考慮し、その人に最適な訪問診療を行います。患者さんの生活全般をサポートすることが、在宅医療の大きな役割であり、私たちに求められる責任です。



















