手作りケーキの力で「対話と副業」のキッカケをつくったNEC社員
西山勇太さん(本業=NEC社員/副業=スイーツ作り)
西山勇太さんは副業でケーキ作りをしている。本業はNEC(日本電気)の社員。営業、マーケティングを経て、現在は新ビジネスの企画業務に従事。そんな中、なぜケーキ作りをすることに?
「きっかけはNECがダイバーシティーを推進し始めた2017年に社員有志で立ち上げた『対話会』です。これは部署を問わず参加・交流できる会で、最初、私は百貨店などのしゃれたお菓子を差し入れていたんです。『おいしい』『食べたかった~』と会話の口火を切るのに最適でした。しかし、会の最後にみんなで割り勘しようとか、いくらだったの? と場が固くなることがたびたびありました。それならば手作りケーキはどうかなと試してみたんです」
手作りケーキだと不思議とお金の話にならず、「それなら私はおいしいお茶を持ってくる」「私は会議室を予約する」などと、他の役割を買って出る人が増え、運営が自主的に回りだしたそうだ。
「自主的な動きが出るだけでも十分成功だと思っていたのですが、それでも支払いをしたいと言う人もいて、寄付BOXを作ることにし、それぞれが気持ちを入れてくれました。ケーキの力を感じましたし、人の行動って不思議だと思うようになりました」
西山さんの手作りケーキのバリエーションは豊富だ。冬はイチゴ、バレンタインにはチョコレート、夏はマンゴー、秋は洋梨や栗、ハロウィーンにはカボチャなどの具材を使い、ショートケーキやタルト、チーズケーキなどを作っている。
「ケーキを箱から出した瞬間に『わー』と歓声が上がることもあり、ケーキ作りはうれしいですね。手作りケーキの出る対話会は社内で少し評判となってくれました。対話会がきっかけで、社員と役員の対話が促進され、社内に許認可保育園をつくるプロジェクトも立ち上がりました」
贈与経済とスイーツの相性は抜群
ところが、19年の冬にコロナ禍が始まり、対面で行っていた対話会に制限がかかった。
「ケーキ作りがすっかり趣味になっていた私は、これを外でもやりたいと思うようになりました。しばらくして、社内で行われたNEC未来創造会議というプロジェクトで、ペイフォワードやギフト経済をテーマにした実証実験が行われたんです。そこで『共感コミュニティ通貨eumo(ユーモ)』というスマホアプリを知って、加盟することにしたんです」
「ユーモ」は3カ月でチャージしたコミュニティー通貨(電子マネー)が失効するのが特徴。失効したコミュニティー通貨は加盟店への支払いの際にギフト(チップ)を送った利用者らに付与。贈与・循環経済を促すことに特化した仕組みだ。日本全国で300近い店が加盟している。西山さんの店はSweets&Suitesという。
「今は週に2、3個のオーダーが入るようになりました。フェイスブックなどの投稿を見てくれたまったく知らない方からもオーダーが入るようになりました。売り上げは昨年の8月から12月で30万円ほどです」
そもそもケーキ作りに挑戦したのは対話会の場を和ませるため。西山さんは初心忘れずで、対話のスキルを磨くためファシリテーション認定講座で講師資格も取得した。今後は、企業・団体向けの対話の場にファシリテーション技術とケーキの二刀流で切り込む予定だという。ますます引っ張りダコになりそうだ。