新川「京八」おでんとコップ酒が様になるまでの修行道場
賀茂鶴の燗は人肌がありがたい
凍えた両手をこすりながらまずは賀茂鶴の燗(420円)に厚揚げとさつま揚げ(各210円)。燗つけ器にアルミのちろりを突っ込み、時折触って熱さを確かめる3代目。大きめの蛇の目猪口にギリまで注いでもらい口を寄せてチューッといく。むせない程度の人肌がありがたい。
「昭和11年に初代のおじいちゃんが京都から出てきて店を出したの。灘や伏見から船でお酒を持ってきて、この辺の酒蔵に納めてた。昔は小柄な男でも軽々と樽を担いでいたわよ」
2代目の大女将が話してくれた。なるほど。確かにこの辺は白鹿をはじめ酒造会社が多い。そんな老舗のカウンターで一人酒を楽しめるようになるにはそれなりの修行と月謝が必要だ。アタシもようやく、気負いなくこんな店で飲めるようになった。そう、ひとりごちていたら、2人目の客が現れた。ヨレヨレのフリースに運動靴。ぼさぼさの白髪。80は過ぎているであろう大先輩がドッカとカウンターの真ん中に。地元のご隠居か。「ちくわぶの滲みているヤツと生ビール」。すると大女将が「みんな同じよ」「じゃ、下の方のヤツ」。苦笑しながら3代目が底の方からちくわぶを掘り出す。アタシもここまでになるには、あとどれくらいかかるか。
燗酒で温まり、口が甘くなったのでエビス生ビール(520円)と京風牛皿(460円)を。すき焼き風の牛皿は甘めの味付けで、苦みの強いエビスにドンピシャ。サイコ~! 6時を過ぎ、女性を含めた若い会社帰り3人が来店し、後ろのテーブルに座った。何となくホッとして、好物のはんぺんを頼む還暦男でした。
(藤井優)
○京八 中央区新川1-16-5

















