初の生保出身 筒井義信新会長率いる経団連が抱えるジレンマ
筒井氏の経営哲学は「人は力、人が全て」という言葉に集約される。チームで仕事を進めることの価値を最大化するために、社員一人一人の力を引き出すことを重視している。「飲みニケーション」の効用を説くのもユニークだ。リーダーには「人徳」が不可欠で、変化に対応しながらもブレない姿勢を貫くことが重要だと強調する。
筒井氏の経団連会長就任について、金融関係者からは「筒井さんの分け隔てなく人を大切にする人柄が評価された人事」と期待する声が多い。しかし、不安材料も皆無ではない。
■機関投資家トップが政府民間議員にも
「免許業で政府の関与を受けやすい生保出身の筒井氏は、案件によっては政府と民間の間でジレンマに立たされる局面も予想される」(同)と危惧される。例えば、経団連会長は政府の経済財政諮問会議の民間議員を務め、金利の動向や国債の発行計画に関与する。
一方、日本生命は機関投資家として最大級の国債の引き受け手でもある。市場参加者というプレーヤーが、同時に審判も務めるという利益相反が生じかねない。筒井氏は「疑念を生まないよう肝に銘じる」というが……。
また、筒井氏は長らく生保業界のトップとして、かんぽ生命による民業圧迫を批判し、郵政民営化を求めてきた。しかし、政府はここにきて郵政民営化関連法を改正し、国の関与を強める方向に動いている。ここでもジレンマを抱える。ブレない筒井スタイルを堅持できるか。