京都・向日市、府内初の130メートル級、ゆがんだ建設計画に立ち向かう辣腕弁護士
容積率を800%に緩和し、都市計画変更手続き
だがこの時、中島弁護士は一抹の不安を覚えていた。
「普通の駅なら、跨線橋を造って東西を結べば済む話です。それなのにこんな大がかりな事業。JR側に『そんなに大仰なことではないと思う』と伝えたら『きちんとしたものを造りたい。ついては東口に駅ビルを造る』と言う。『分かりました。それならお造りになったらいいでしょう』と、ここまではよかったんですが……」
ベテラン弁護士の悪い予感は的中する。3年後にJR側は事業の一環として、駅ビルに隣接するタワマン建築の計画を発表したのだ。まさに後出しジャンケン。中島弁護士の不信感はピークに達する。
「便利な東西通路を造るいわば見返りとして、タワマン建築という話になりました。いつの間にかセットの事業になっていたんです。この計画は向日市とJRの両者で一致。役所内に審議会をつくって容積率を800%に特別緩和し、承認に向けて都市計画の変更手続きを取ったんです」
驚いたのは、地元住民だ。のどかな街に突然130メートル級のタワマン建築プランが浮上したことで、中島弁護士が指摘した問題点などに危機感いっぱい。このため「東口の開設整備だけで十分であり、タワマンは不要だ」とする意見書が出されたものの、JR側の回答は、要約すると「タワマンの建設が認められなければ、東口の開設は行わない」というもので、住民が知らぬ間に公共性の高いインフラ整備と民間の開発が一体化していたという。
「住民にとって、選択の余地がない形で進められていた計画なんです。要するに住民の弱みにつけ込んだわけですよ」
中島弁護士によると、建築審査会の結果が出るまでに「1年か1年半かかる」という。現在、工事が進む駅ビルが完成すれば、いよいよタワマンの工事が始まるが、申し立ての結果を待たずに着工しても法的には何ら問題はない。
「米国なら仮の差し止めをどんどん出しますが、今の日本の法律ではどうにもできません。まさに建ててしまえば勝ちなんです」
70代の地元住民は「商業施設にいろんな店が入れば買い物も一度で事足りて助かるけど、ただ周辺の電器屋とか魚屋、本屋、食堂といった個人商店はどうなってしまうのか」と憂慮する。
インフラも心配だ。タワマン1000人の街ができれば保育園や小学校、電車の大混雑といった問題が浮き彫りとなる。しかし、こうした地元対策は手つかずとなっている。
「何の計画性もなく進めているからです。少数の富裕層が、自分が豊かになって満足している社会。アパートに住む人々を見下ろして経済的、社会的な優越性に浸っている社会。これはやっぱりいびつで異常だと思います。タワマンはその格差社会の象徴なんです」
百戦錬磨の辣腕弁護士の叫びをどう聞く──。



















