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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

マラソン札幌移転の混乱は運営を託された日本陸連の落ち度

公開日: 更新日:

 IOCが、東京オリンピックのマラソン競歩を札幌で実施すると発表し大騒ぎになった。随分前にこのコラムで、東京の8月のマラソンは危ないと、代替地に河口湖、軽井沢を挙げたことがある。とにかく東京の真夏を走るのは無謀だという議論が欲しかった。

 死者が出ると警告する専門家までいた。そんなコンディションで、完走の美学で育った日本選手は沿道を埋める日の丸の中で棄権できるか。せめて議論を沸騰させ理解を深めておけば選手に選択肢が生まれる……。

■世論に問い掛ける立場

 しかし、議論はなされぬまま、話は編みがさ、打ち水、遮熱性舗装といった現実離れしたアイデアで進んだ。ランナーの脳は地上2メートルを移動するから遮熱効果は届かないのだ。ただ、これを東京都の責任にしては気の毒だろう。運営を託された日本陸連は問題の存在を指摘し、世論に問い掛ける立場にあった。それをしないどころか“夏こそチャンス”とMGCシリーズを展開し、マスコミも右へ倣えとあおった。

 アフリカ勢が夏に弱いというのは昔の話なのだが、IOCが札幌を選んだのは、8月末に北海道マラソンがあるのを知っていたからだ。この大会は1987年、当時の小掛照二強化委員長がロス五輪の惨敗を踏まえ暑さ対策として提案した。本当は秋を希望していたのだが、既存大会と重複を避け「9月以前」と条件が付けられた。ともかく、陸連は科学部総動員で血液検査など数々のデータを集めてきた。国際陸連は札幌の30年を評価して逆提案した。先に日本陸連が「我々にはこういう例もありますが」と言っておいたら、太刀打ちも反論もできた。

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