静寂の中で音だけが響く…大相撲「無観客場所」リポート

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取材方法にも変化が

 取材の仕方も通常の本場所とは異なる。

 通常、可能な支度部屋での取材は禁止。支度部屋から土俵に向かう動線には柵が二重に設けられており、その外側が取材可能なミックスゾーン。取組を終えて、帰る直前の力士を呼び止めて話を聞く。注目力士ともなると、柵の外側は黒山の人だかり。柵の内側を通りがかった呼び出しのひとりは、「動物園の動物になったような気分」と笑う。

 それでも複数の記者は「思ったより取材がしやすい」と言う。支度部屋内は広いとは言えず、大勢いる力士の通行にも気を使わなくてはいけない。さらに他の力士に配慮してか、大半の力士は支度部屋で受け答えをする際は小声になる。声を拾うために報道陣は力士に詰め寄り、まるでおしくらまんじゅう状態になることも多い。

 支度部屋の外だと力士も普通の声でしゃべる。彼らは報道陣に呼びとめられても立ち止まる義務はないものの、ほとんどは足を止めて質問に答える。例外は普段から勝っても負けてもほとんど無言の遠藤くらいだ。

 報道陣は館内にいる親方衆への接触は原則、禁止されている。その代わり、電話取材は可能。このあたりも「むしろ取材しやすい」と声が出る要因だろう。

 協会がもっとも神経をとがらせているのが、新型コロナウイルス対策。場所中、力士はコンビニに買い物に行く程度はともかく、繁華街への出入りはもってのほか。そんな中、2日目に力士のひとりが飲みに出たのではないかというウワサが協会内に流れ、てんやわんやの騒ぎになったこともある。

 報道陣は館内に入る際、センサー式の検温機で体温を測る。ちなみに本紙記者は34・9度。平熱が35度台なので、初めて見る数字だ。もっとも、センサー式の機械はプラスマイナス0コンマ何度の誤差が生じることも珍しくないそうだ。高い数字でない限りは大丈夫だろう。

 報道陣は一度入館したら、外出後の再入館はできない。例外は出入り口にある屋外の喫煙所のみ。館内の売店や食堂は営業しておらず、前相撲から取材する記者は昼食などを買いこんでから来なくてはならない。

 無観客ならではのトラブルもあった。ある新聞社は遠隔操作できるカメラを客席に設置。定点で撮影をしようとしたが、これは協会職員に注意され、撤去となった。

■思わぬ副産物も

 思わぬ副産物もある。親方のひとりは「中学、高校生の間で中継が評判なんです」とこう話す。

「平日の夕方なんて部活をやっていたら家にいない。通学に時間がかかる学生さんならなおさらでしょう。それが今は新型コロナウイルスの影響でほとんどの学校が休校。協会やNHKには『相撲は意外と面白い』という学生さんの声が届いている。若年層への相撲普及が長年の課題ですが、そもそも時間的に中継が見られないのは当たり前だけど盲点だった。今後の普及活動の参考になります」

 今場所もあと10日。感染者を出さずに完走できるか。

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