フジでは年収3000万円 金子正明さんの波瀾万丈な仕事人生

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転職2週間でボスが急逝

 しかし、会長秘書としてフジテレビに入社してわずか2週間後の88年4月16日、金子氏の人生を揺るがしかねない大事件が起きた。自身が仕える鹿内会長が42歳の若さにして、急性肝不全で急死したのだ。

「あぁ、俺の前途、終わったな、と絶望した。突然、自分の仕事がなくなったわけですから。急きょ、半年後に予定されていたフジテレビ開局30周年記念イベントの事務局に転属されました」

 この時、自衛隊幹部として、地方の部隊で危機管理や資材管理を担当した経験が大いに役に立った。記念イベントは、パリ・リヨン駅発、東京行きのオリエント急行を日本で走らせる企画。列車の事故は人命に関わることから、どんな事態にも対応できるよう辞書ほどの太さもある警備対応マニュアルを作成して臨み、10月から年末までの運行計画を大きなトラブルなく成功させた。

 この結果が評価され、金子氏はフジテレビ本社の警備を統括する、警備部長へと栄転を果たす。

「ここでは自衛隊での人脈に助けられました。例えば、番組制作で道路を使う時などは警察への申請が必要です。私は警察のレスリング部の立ち上げに関わっていたので、その時に知り合った方たちが順調に出世していた。だから多少は顔が利いたんです。署長に断られるような依頼でも、うまく計らってもらいました。他にも消防庁の方ともね……」

■年賀状は毎年2000枚

 人とのつながりを大切にする金子氏が書く年賀状の数は毎年2000枚を超えていたという。人脈の他にも、お台場への本社ビル移転時には他局に先駆けて入退社時のパス制度を導入したり、防犯対策のエレベーターを考案し、特許を取得した。最終的に年収が3000万円を超えたという。

 61歳までフジテレビに勤め、退職。その後は自衛隊時代のコネクションからビル管理会社へ就職し、10年余りの間、営業部長、管理部長、業務部長の3つの役職をこなした。

 現在は専修大の後輩、工藤章氏(76年モントリオール五輪銅メダリスト)が経営するビル総合管理会社「アメニティコーポレーション」で顧問を務めている。

「仕事は私の楽しみ。働くことが好きなんです。他の趣味は競馬かなぁ。一昨年に子や孫と行ったハワイ旅行の軍資金も、競馬で1000円が77万円になった万馬券を当てたものだからね(笑い)」

 来月8日で80歳を迎える金子氏は豪快に笑った。

▼かねこ・まさあき 1940年7月8日生まれ、栃木県足利市出身。専修大学卒業後、自衛隊へ幹部候補生として入隊。68年メキシコシティー五輪63キロ級で優勝。コーチとして72年ミュンヘン五輪、監督として75年モントリオールプレ五輪に帯同。現在はビル総合管理会社で顧問を務める。

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