球界格差拡大で「ソフトBの1強」加速 Gコロナ損失は50億円

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 あの松井秀喜に次ぐスピードだという。

 16日、巨人岡本和真(24)が契約更改。7000万円増の2・1億円でサインした。今季は31本塁打、97打点をマークし、本塁打、打点の2冠を獲得。巨人での高卒7年目、25歳シーズンでの2億円到達は松井の6年目に次いで2番目。岡本は「世間がこういう状況で、球団も厳しいはずなんですけど、感謝の気持ちでいっぱいです」と喜んだ。

■観客動員8割減

 大盤振る舞いに沸く一方で、岡本が「球団も厳しいはず」とおもんぱかったように、巨人はコロナ禍で大幅な収入減を強いられているともっぱらだ。最も打撃を受けたのが入場料収入。今季は無観客試合で開幕し、その後も国の方針で収容人数を制限せざるを得なかった。本拠地開催の観客動員数は49万2526人。昨季の302万7682人の16・2%に過ぎない。某パ球団関係者が言う。

「1席平均のチケット代を3000円とすると、チケット売り上げは昨年の約91億円から約76億円減の約15億円。日本テレビやインターネット配信のDAZNからの放映権料で相殺しても、マイナスを解消することはできないでしょう。今年の全体的な赤字は50億円は下らないのではないか。今年は大半の球団が数十億円規模の損失を抱えることになるが、巨人は阪神と並んで球場のパイが大きい分、損失額も増える」

 巨人では一部の裏方が収入減を理由に減俸になったケースもあるという。

「巨人は最も資金力豊富な球団と言われたが、このオフのFA補強はDeNAから年俸1億円以下の梶谷と井納を獲得するにとどまる見通し。親会社は、18年オフに広島からFA宣言した丸を5年総額25億円で獲得したような大型補強には消極的になっています。かつて、1試合1億円と言われた地上波中継の放映権料が激減、入場料収入によってこれを賄ってきたが、コロナ禍で来季も満員の観客を動員できるかどうかは不透明。入場料に頼らないビジネスモデルへの転換を図っています」(巨人OB)

 実際、親会社の読売新聞グループ本社は新たな収入源の確保に奔走している。

 DAZNとの20億円といわれる契約はもちろん、現在、三井不動産が進める本拠地・東京ドームのTOB(株式公開買い付け)が成立した暁には、三井不動産から2割に当たる株式を譲渡されることになっている。

「巨人はこれまで、毎年東京ドームに20億円以上とされる球場使用料を払い、球場内の飲食の売り上げは東京ドームの取り分になっていた。株主になれば、看板広告収入や飲食収入の恩恵を受けられるようになるのではないか」(経済紙記者)

高給選手のしわ寄せ

 ただ、今は入場料収入の減収が巨人を苦しめている。

 大幅昇給した岡本や年俸5億円の坂本のように、一部の中心選手が好待遇を受ける一方、このオフは育成選手を含めて18人もの選手が戦力外となり、昨年のドラ1である堀田ら5選手が故障などを理由に自由契約となり、育成での再契約を打診された。

 数字を上げた分だけ稼げるのがプロの世界とはいえ、天下の巨人でも選手間格差が鮮明になりつつあるようだ。

「巨人はまだマシな方です」とは、球界OB。

「今オフの契約更改では多くの球団で格差が如実に表れている。特にFA権を取得したヤクルトの山田が7年最大40億円規模、中日の大野雄が3年総額10億円規模の契約を結んだ。他球団には山田や大野より高い年俸をもらっている選手もいるが、選手平均年俸が低いヤクルトや中日のような球団は、一人の選手の年俸が突出しかねない。中日は契約更改で保留者が続出し、選手会が抗議文を出すなど、他の選手がしわ寄せを受ける形になっています」

■遅れるインフラ整備

 パでは、楽天がかねて三軍制の構想を温めていたものの、今年の育成ドラフト指名は1人だけにとどまり、三軍創設は先送りされる見通しだという。楽天は球団単体で独立採算を図る球団の一つ。必然的にシビアにならざるを得ないのだろう。前出の球界OBは、「4年連続日本一を達成したソフトバンクの勢いがさらに増すでしょう」と、こう続ける。

「巨人も含め、一部のトップ選手の年俸を払うことに精いっぱいな球団が大半を占め、その他大勢の選手やコーチ、裏方、スタッフがあおりを受けるケースが出ている。給料や経費など1万円単位のお金を削り、負担を強いているのが実情。試合における戦略だけでなく、育成や編成、故障管理も含めた『データ野球』が全盛を迎えつつある中、数十万円、数百万円の機材の導入すらままならないところもある。ソフトバンクもコロナ禍によって大打撃を受けているはずですが、資金力は12球団で断トツ。自前の本拠地球場と育成施設を持つなど、人とモノ、両面のインフラ整備などへの投資を惜しまないので、環境は整っている。今からソフトバンクに追いつこうとしても、各球団はコロナ禍の影響でお金が使えなくなり、チーム強化の動きが停滞しかねない。そうこうしているうちにソフトバンクは周東や栗原のようなイキのいい若手がどんどん出てくる。他の11球団は引き離される一方でしょう」

 コロナ禍を契機に一般社会のみならず、プロ野球界においても格差が広がっている。ソフトバンク1強時代がますます加速しそうだ。

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