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春日良一五輪アナリスト

長野県出身。上智大学哲学科卒。1978年に日本体育協会に入る。89年に新生JOCに移り、IOC渉外担当に。90年長野五輪招致委員会に出向、招致活動に関わる。95年にJOCを退職。スポーツコンサルティング会社を設立し、代表に。98年から五輪批評「スポーツ思考」(メルマガ)を主筆。https://genkina-atelier.com/sp/

逮捕された高橋治之元理事には9億円 あぶり出される東京五輪招致の闇

公開日: 更新日:

長野五輪招致活動経費の3分の1

 私が、招致に関わった1998年の長野五輪の時もそうだったが、浮動票といわれるアフリカ出身のIOC委員の票をいかに獲得するかが招致成功の決め手のひとつだった。当時は、五輪コンサルタントの定義もなかったが、「どこどこの票を取れる」と売り込んでくるやからが招致委にやってくる。彼らの目的は五輪の成功ではない。集票活動によって私腹を肥やすのである。投票はIOC委員による無記名。本当にその人の活動が奏功したかどうかは天のみぞ知るである。これほどおいしい話はない。

 それらの売り込みを精査するのも私の仕事だった。「アフリカの票を取れる」オファーは希少だったが、それゆえにむしろ慎重になった。結果、私は有象無象のやからを選ぶより確実な方法を採った。アフリカに強い国の力を借りたのだ。一銭もかからなかった。

 東京五輪2020の招致委はアフリカ票の工作に200万ドルを動かした他に、多数の団体や個人とコンサルタント契約をして、活動費を支払っている。それでも、高橋氏への820万ドルを超す金額はない。思えば私の関わった98年の長野五輪の招致活動経費は25億円ほどだった。高橋氏への3倍にもならない。皮肉にも長野招致の帳簿は焼かれてその明細は不明となったが、東京招致の明細は焼けていないはずだ。

 今回の受託収賄は入り口に過ぎない。高橋治之氏の逮捕は、東京五輪招致の闇を暴くべき機会である。それを日本のスポーツ界をクリーンにする第一歩にすればいい。オリンピックの商業主義化は個人の利益のためであってはならない。

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