元川悦子
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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

森保J最年少アタッカー「久保建英の軌跡」 FC東京U-15むさしの時代の中村忠監督に聞く

公開日: 更新日:

中村忠(元FC東京U-15むさし監督 現東京ヴェルディ・アカデミーヘッドオブコーチ)

「僕は今までW杯をひとりの観客として見ていた。もし選ばれたら、ですが、僕が日本代表の選手に魅了されてきたように今度は自分が魅了する側になれれば、と強く思っています」。8月29日の代表新ユニホーム発表会で力を込めて話したのが久保建英(レアル・ソシエダ)。9月の米国、エクアドルとのドイツ遠征2連戦では、米国戦に先発出場して後半23分までプレー。攻守に躍動した。

 久保は名門バルセロナの下部組織で育った超エリート。2015~19年は日本で過ごし、最初に所属したのがFC東京U-15むさしだ。当時の中村忠監督(現東京ヴェルディ・アカデミーヘッドオブコーチ)に日本の新エース候補の軌跡を聞いた。

 ◇  ◇  ◇

 ──久保を初めて見たのは?

「13年夏のU-12ワールドチャレンジです。建英はバルセロナの一員として参加していましたが、チームメートにはエリック・ガルシアやアンス・ファティ(ともにバルセロナ)らそうそうたる面々が揃っていた。『日本人の少年が彼らと同じレベルでやれているのは凄い』と感心しました。僕が指導した東京Vの杉本竜士なんかも中1の英国遠征でフラムやリーズの選手と互角にプレーしていましたけど、建英の場合は現地スペインに住み、過酷な環境に適応しつつ、サッカーをしていた。だからこそ、平常心で堂々とやれるんだと痛感しました」

 ──その久保が15年春に帰国し、FC東京U-15むさしに入った。

「中2の春に加入し、最初は同学年のチームに入れましたが、あまりにレベルが違うので2~3週間ほどでAチームに上げた。すぐに試合にも出しました」

 ──久保本人は「正直、日本に帰ってきたくなかった」と後に話していたが。

「そんなそぶりは一切見せず、加入当初から進んで他の選手の輪に入っていましたよ。(年齢が)1つ上の平川怜(熊本)なんかと積極的に絡んでチームに溶け込んでいた印象です。とにかく明るくて、人懐こくて、物おじしない子なんで、上の学年の選手からも可愛がられましたね」

 ──久保は中3になった翌16年にU-18に昇格し、同年の11月にはU-23の一員としてJ3の試合にも出るようになった。

「U-18では2~3つ上の選手と一緒にプレーし、U-23では大人の選手と共闘しました。2つ上の原大智(アラベス)を『タイチ君』と呼んでいたし、『アライグマ』なんてニックネームを付けて懐いた先輩もいた。年齢に関係なくワイワイしているので常に飛び級という環境の中でも全く問題なくやれましたね」

■いつも賑やかでおしゃべり好き

 ──久保の印象的な出来事は?

「おしゃべり好きなとこかな。食事中もずっと話しているので『静かに食べろ』と注意したこともあったくらいです(笑)。ミーティング中も隣の人間と絡んだり、静かにしていることがなく、いつも賑やかな子。高いエネルギーをピッチ上でもぶつけていた。練習はいつも100%で目の色を変えて取り組んでいましたね。バルセロナ時代の建英は最初はボールをもらえなかったり、いろんな苦労があったようです。そういう経験があるから、明るく前向きで真摯な姿勢を持ち合わせるようになったんだと思います」

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