長嶋茂雄さんの「まさかの一言」で高級ブランドショップ店員は素っ頓狂な声をあげ目を白黒させた
と素っ頓狂な声をあげ目を白黒させていた。バッグは全部で7、8個あったから、1個15万平均としても8個で120万円だ。長嶋さんは気にするそぶりも見せず、財布からアメリカン・エキスプレスのクレジットカードを取り出すと慣れた手つきでサラサラとサインした。
当時の僕の月給はだいたいバッグ1個分。さすがに天下の巨人のスーパースターは違うと感心したのを覚えている。
そのとき同行していた藤田さんが長嶋さんにこう尋ねた。
「おい長嶋、それ全部家に持って帰るのか?」
「いや、家に持って帰るのは1個だけだ」
「それならオレに1個くれ。預かってやるから」
長嶋さんが藤田さんにバッグを預けたのか、ひとつあげたのかは忘れてしまった。もちろん、長嶋さんが奥さんへのお土産にした以外の残りのバッグをどこに持っていくつもりだったのか、誰に渡す考えだったのかはわからない。
▽古賀英彦(こが・ひでひこ) 1939年、熊本県生まれ。熊本工、近大を経て62年に巨人入団。米マイナーやベネズエラなど海外でもプレーし、引退後は大洋、ダイエー、南海、ロッテなどで指導。90年には米マイナーで日本人初の監督に就任。04年からロッテ二軍監督を務め、09年オフに退団。その後も米国を拠点に野球指導に携わる。
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当連載【プレイバック「私が見た長嶋茂雄」】の次回も、古賀氏による長嶋さんの「おカネにまつわる話」を再掲する。