長嶋茂雄さんの引退試合の日にもらった“約束”のグラブを含めてすべての思い出が宝物です
実は長嶋監督はシーズンの成績にかかわらず、その年限りで勇退することが決まっていたのだ。後日、聞いたところでは、最終戦の前夜に王さんをホテルの監督室に呼び、「今季限りで辞める。次は藤田さんがやる」と話したそうだ。
私はその試合で本塁打を打ち、試合も勝った。長嶋監督が留任すると信じていたから、数日後、ユニホームを脱がれたことには本当に驚いた。
長嶋監督はV9時代の1、2番コンビを最終戦で再現することで、現役晩年の私に「有終の美を飾らせたい」と花を持たせてくれたのだと思う。
長嶋さんとの思い出はすべて私の宝物である。
▽柴田勲(しばた・いさお) 1944年、神奈川県生まれ。法政二高時代に投手として甲子園夏春連覇を達成し、61年10月に巨人入団。外野手に転向し、日本初のスイッチヒッターとなる。不動の1番打者として巨人V9を牽引し、通算2018安打、579盗塁。巨人のOB会長も務めた。