長嶋茂雄さんの引退試合の日にもらった“約束”のグラブを含めてすべての思い出が宝物です
長嶋さんの引退試合となった後楽園での巨人のシーズン最終戦、試合後の引退セレモニーの開始が遅れました。試合が当初の予定より早く終わってしまい、マウンドで挨拶する予定だった長嶋さんがスポットライトを浴びるには、まだ明る過ぎると説明された。
暗くなるのを待つ間、選手はロッカーで待機していた。その時、ツカツカと長嶋さんがやってきてグラブを渡してくれたのである。
「えっ、覚えていてくれたんだ!」
感激しました。天真爛漫なイメージが先行するが、長嶋さんはこうした気遣い、気配りのできる人。ファンの方が持つ印象とは別の一面がある。
80年の巨人のシーズン最終戦。ペナントレースの終盤、3位と4位を行ったり来たりで、長嶋監督の去就が大いに注目されていた。迎えた広島球場での一戦、マスコミは、勝てば3位で留任、負ければ4位で退任と盛んに報道していた。当時、私は中堅のポジションを松本匡史に譲り、スタメンを外れることが多かった。そんな大事な試合に長嶋監督は私を1番、高田繁を2番でスタメン起用。後に高田も、「あの時はビックリした。あんな大事な試合でこの1、2番で大丈夫かなと思った」と言っていた。