我々長嶋世代の居場所は世の中の真ん中にはない。でも僕らは長嶋に励まされ、青春を生きてきた

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昭和の新庄」か? いや新庄とはまったく違う。いくら不思議な長嶋語をしゃべろうと、バントの構えをしながら代打を告げようと、長嶋は敬愛の対象だった。野球を知らない人にも愛された。その原点はやはり〈天覧試合のサヨナラホームラン〉に尽きると思う。

 終戦で日本人の心にぽっかり穴があいていた。天皇陛下は人間宣言され、国民統合の象徴という実感のない存在になった。心の絆を失っていた時、長嶋が陛下の前でサヨナラホームランをかっ飛ばし、「みんなの長嶋」になった。長嶋という新たな太陽の出現にみな沸き立った。

 2週間前、雑誌にそんな原稿を寄せたら校正者に強く拒まれ、訂正を求められた。そういう空気が確かにあったのだよ、と言っても通じない日本になってしまった。

 長嶋逝去は、あの空気を共有していた〈社会の死〉を意味しているのだと僕は思い知らされた。もはや長嶋の核心さえ語り合えない。知ろうとさえしない世代が大勢を占めているのか。

 我々長嶋世代の居場所は世の中の真ん中にはない。でも僕らは長嶋に励まされ、青春を生きてきた。

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