バスタオル一枚の星野監督は鬼の形相でダッシュ、そのまま俺は飛び蹴りを食らった
「その代わり、おまえは絶対に打てよ!」
中日バッテリーは予定通り、松井に全打席敬遠。1打席目からバットの届かない外角に投げ続けた。4打席目になると、イライラを爆発させた巨人ファンがスタンドからメガホンを投げ入れ、試合が一時中断した。敵地の東京ドームだったこともあり、ヤジはすごかった。
前日からスポーツ紙も「山﨑対松井」の記事ばかり。「山﨑勝負しろ」と書かれたこともあった。そんな異様な雰囲気の中、4打席連続敬遠。徹底的に勝負を避けた中日は、松井に本塁打を打つチャンスを与えなかった。星稜高時代、甲子園で5打席連続敬遠を味わって以来の敬遠攻めだったろう。
一方、俺は3打数無安打に終わり、試合後は安堵感よりも恐怖の方が勝っていた。ホテルの部屋に戻ると、電話が鳴った。声の主は星野監督。
「ちょっと部屋に来い」
何が待ち受けているのかは想像できた。覚悟を決め、ドアをノックして部屋に入ると、バスタオル一枚の星野監督。ソファに足を組んで座っていた。俺の顔を見るなり、鬼の形相で俺のもとにダッシュしてきた。


















